知りたい!子どもが世界一幸せな国、オランダの幼児教育法「ピラミッドメソッド」とは?
ユニセフの発表によると、オランダは世界一子どもが幸福な国。そのオランダで普及している「ピラミッドメソッド」または「ピラーミデ」を、ご存知ですか?国際化・多様化が叫ばれる現代にあって、子どもの自主性を伸ばし、自立して考える力を養うことができるというこの幼児教育法を取り上げてみました!
世界一子どもが幸せな国、オランダ
ユニセフが2013年に発表した研究レポートによると、オランダは、2007年のレポートに続いて連続で、子どもの幸福度の評価ランキング第1位に輝いています。
ユニセフの研究報告書「レポートカード11」は、先進国の子どもの幸福度を5つの側面、物質的豊かさ(子どもの貧困)、健康と安全、教育、日常生活上のリスク、住居と環境から評価、比較分析
出典:www.unicef.or.jp

そんなオランダで、国を挙げて推奨されている幼児教育法があります。それが「ピラミッドメソッド」。聞いたこと、ありますか?
「ピラミッドメソッド」って?
オランダの教育心理学博士フォン・カルク氏が、知能多重説理論や動的心理学などを基にして開発した教育法。現在では、オランダ政府教育評価機構(CITO)が幼児教育カリキュラムとして推奨し、国内に提唱しているメソッドです。
現在ではオランダはもちろん、ドイツやアメリカにも導入され、信頼度の高いメソッドとして広く普及しています。
ピラミッドメソッドの効果とは…
ピラミッドメソッドでは、子どもたちが自ら決断する力を養うことができると言われています。
新しい動的心理学理論で基礎石(足場)がつくられているこのメソッドは、言語能力と社会適応性の高さが実証
出典:www.kiccc.or.jp
遊びや自立学習を通じ、自分で選択して決断できる力の育成を目指します
出典:edupedia-for-student.jp
考える力や自主性を育てる教育法として、日本でも注目を集めています。
ピラミッド基部の四つ角=4つの基礎概念
「ピラミッドメソッド」は、保育と教育が一体化された環境で子どもたちを育むという「保育環境理論」に基づいています。
①子どもの主体性
②保育者の主体性
③教育的な寄り添い
④教育的な距離
という4つの基礎概念を角に置いた四角の上に成り立つピラミッド型をした教育理念であることから、こう呼ばれています。

①子どもの主体性
子どもが安心して遊べる保育環境で、情緒的な安定感を得られる場では、その子の探索意欲や積極性が大きく育つと考えられています。
②保育者の主体性
子どもが同じ遊びにすぐ飽きてしまうのは、実は当たり前のこと。そこで保育者が、それぞれの子どもが持っている適切な発達水準に到達するような遊びを準備してあげることが重要です。また、子どもたちが共同的に学べる場所も用意する必要があります。
③教育的な寄り添い
母子の良好な関係がもたらす影響に注目した「愛着理論」を基に、その愛着は保育者と子どもの関係にもあてはまると提唱。保育者と子どもが良好な信頼関係を築くことで子どもが安心して活動に向かうことができるようになります。また他者との絆がもたらす安心感は、自分自身と他者を信頼することにもつながります。
④教育的な距離
不可視なものにも焦点を合わせる学びが子どもの発達を促す上で大切、という「ディスタンシング理論」を適用した考え方です。発達に合わせて、子どもに身近で具体的なことから取り組みを始めさせ、段階的に外界や抽象的な世界に導き、表現することにトライさせて発達を促します。
4つの基礎概念を基に整える保育環境とプロジェクト

遊びと学びが融合した保育環境
ピラミッドメソッドでは、遊びと学びが融合した保育環境が、充分整った保育室を用意することを提唱しています。目に見える遊びを準備してあげることで、子どもが自主的に取り組むことができ、自律性を養うことにつながるからです。
日々の生活にテーマ性と目的を与えるプロジェクト
大きさや数、色と形、家などといった11のテーマで、日常の保育活動の中に明確なテーマと目的を与える保育方法です。さまざまなテーマのプロジェクトを、興味を引きやすい身近な話題から、抽象的な対象へと少しずつ難易度を挙げ、数年間繰り返し取り組ませます。
8つの発達領域に刺激を与える
ピラミッドメソッドでは、子どもの発達を個性・情緒・知覚・言葉・思考・空間と時間の理解・運動・芸術という八つの領域に分類しています。
出典:www.play-dev.jp
保育環境を整え、適したテーマを随時与えることで、この8つの発達領域をくまなく成長させることができるようにしています。
ピラミッドメソッドを導入した園では…

ピラミッドメソッドを受けた子どもたちは、精神的に安定し、遊びを満喫し、言語表現が具体的になったり自分で解決しようとする力がついた、という声が聞かれています。それだけでなく、保育者・保護者側にも変化があったという報告があります。
保育者の変化:
出典:www.play-dev.jp
・子ども一人ひとりの顔がよく見え出したことで、配慮が必要な子に寄り添いやすくなった。
・プロジェクトの準備により、新に気づくことや使う言葉が増えた。
・子どもとのやりとりが増え、手ごたえややりがいを感じて保育の楽しさを実感。
・保育者同士の意見・情報交換が活発に。
のびのびと遊びながら学び、親や保育者との絆を深め、他人を信頼し自立する力を養うことができるピラミッドメソッド。日本では、千葉や大阪などにいくつかこの教育法を導入した園がありますが、残念ながらまだまだ普及はしていません。これからますます国際化・多様化していく時代に適したこのメソッドのプログラムやテーマ、子どもとの接し方は、家庭での保育にも参考になると思います!
ピラミッドメソッドに関する参考書籍・DVD・ホームページ

NPO法人 国際臨床保育研究所は辻井正所長のもと、幼児の教育保育に関する指導や講座開催。幼児教育、保育に関する出版物、「セラピーおもちゃ」など販売を手がけています。