シンガポール人は「英語+母語」を話せることが普通
英語、中国語、マレー語、タミル語。
私が暮らしているシンガポールでは、数か国語で書かれている標識をあちらこちらで見かけます。
ここシンガポールでは多くの人が英語を含む2つ以上の言語を話し、3、4つの言語を話すことが出来る人も少なくありません。
しかしながら、多くの人たちは英語が母語というわけではありません。
シンガポールは華人系、マレー系、インド系等で構成される多民族国家。
それぞれの母語は、華人系は中国語、マレー系はマレー語、インド系はタミル語などとなっています。
多くの人の母語が英語ではないにも関わらず、英語を公用語として操るシンガポール人の教育とは一体どのようなものでしょう。
シンガポールは違う 幼児期からのバイリンガル教育
シンガポールの子供たちは、幼児期から「バイリンガルとして」育てられます。
日本では母語である「日本語」をある程度習得してからという流れが主流ですが、シンガポールでは最初から2言語を習得するように育てます。
「バイリンガルとして」育てられるとは一体どのようなことなのでしょう。
バイリンガル教育は国の政策 シンガポール公立校の授業は英語で行われる
すべての子供たちは「バイリンガルとして」育てられる。シンガポールの場合、バイリンガル教育が国の政策なのです。
シンガポール公立校では、学校教育を英語で学ぶこととされています。そして、多民族国家であることからそれぞれの民族のアイデンティティを尊重するために、それぞれの母語(華人系は中国語、マレー系はマレー語、インド系はタミル語など)も同時に学びます。
授業は「母語」の授業を除けばすべて英語で行われます。
日本では「母語」である日本語で通常の授業が行われ、母語ではない「英語」の授業を別途設けています。それに対し、シンガポールでは母語ではない「英語」で通常の授業が行われ、「母語」の授業を別に設けているのですね。
※当記事は2013年現在の内容です。2017年版はこちらからご覧ください。国際的に評価される教育立国
それぞれの母語教育も大切にするシンガポール
前述のように学校教育では英語が主に使われますが、それぞれの母語を伝承するための動きも存在します。
例えば、シンガポール政府主導で行われている、マンダリン(標準中国語)の使用を呼びかける「スピーク・マンダリン・キャンペーン」。
毎年10月は「スピーク・マンダリン・キャンペーン」月間である。この期間中は、街中に啓蒙のためのポスターが掲示され、国会議員、市民代表委員会や町内 会などのメンバーが、各家庭や市場、フード・コートなどを訪問して、華人に対してマンダリン(標準中国語)の使用を呼びかける。
出典:nna.jp
英語教育と母語教育。この二つの存在によって、バランスをとっていると考えることが出来ます。
シンガポールは絶えず英語に触れられる環境である
多くの日本に住む日本人の場合、母語である日本語に関しては、習得・使用する機会にめぐまれています。
では英語はどうでしょう。幼児期からの英語教育は近年日本でも多く見受けられますよね。シンガポールと日本の違いは他に何があるのでしょう。
それは英語がシンガポールで生活するために必要な言語であるということです。
シンガポールを取り巻く環境その1:多民族国家のため英語が共通語
シンガポールは言わずと知れた多民族国家。その人口構成は、中華系74%、マレー系13%、インド系9%、その他3%となっています。
それぞれ異なる母語を持つ民族が一つの国で生活するためには、英語という公用語を使うことが必要不可欠なのです。
シンガポールを取り巻く環境その2:外国企業で働くには英語が必須
もう一つシンガポールという国の特徴として忘れてはならないことは、シンガポールは多くの外国企業、多国籍企業の参入によって栄えてきたという点。
シンガポールに住む外国人は約156万人で全人口の約3分の1を占めます。(2013年9月)
ビジネスを進める上でも、英語でコミュニケーションをとることが、ほぼ当たり前の状況なのです。
使わない筋力が衰えるように、語学は習っただけで使わないとモノにならないもの。シンガポールという国は、常に英語を使用する機会に恵まれています。
シンガポールのバイリンガル教育から学べること
シンガポール人のバイリンガル教育、いかがでしたか?
ポイントは、幼児期からの徹底したバイリンガル教育、絶えず英語を使う環境にあります。そして自らの母語の伝承も大切にしています。
このような環境に置かれることで、シンガポール人は2言語以上を操ることが出来るようになるのですね。