根管治療を繰り返さないために…再発リスクを抑える最新歯科治療設備「マイクロスコープ」とは?
歯の根の中の、神経や血管などに関わる部分(歯髄)を治療する「根管治療」。
特別な治療であるイメージを持たれがちですが、実は歯科医院に通う約3割の患者さんが、根管治療のために受診しているとのこと。虫歯の治療だけでなく、歯の根っこまで治療を必要としている人は、私たちの想像以上に多いようです。
今回Ha・no・ne編集部(インタビュアー:リン)は、四ツ谷デンタルオフィス院長の飯田聡さんに取材をしました。
四ツ谷デンタルオフィスは、根管治療において、より精密な処置ができる設備である「マイクロスコープ」を導入しているクリニックです。
歯科医療の先進国アメリカでは、このマイクロスコープの普及率がほぼ100%だと言われています。
一方で日本国内の普及率は、わずか約3〜4%と低いデータが……。
インタビューでは、このようなマイクロスコープ普及率の低さの要因や、根管治療をはじめとした歯科治療において、マイクロスコープを使う重要性についてお話を伺いました。
マイクロスコープ導入は患者と医師双方にメリットがある
肉眼の約20倍まで拡大できる「マイクロスコープ」
Ha・no・ne編集部 リン(以下リン)
四ツ谷デンタルオフィスでは、国内の歯科医院では普及率がまだ約3〜4%と言われるマイクロスコープを導入されています。
マイクロスコープはとくに「根管治療」で重要と言われている設備ですが、四ツ谷デンタルオフィスでも主にこのような治療で使用されるのでしょうか。
四ツ谷デンタルオフィス院長 飯田聡先生(以下飯田先生)
まず、マイクロスコープは肉眼に比べて約8~20倍まで拡大が可能です。ですから細かい歯の根の先まで見る必要がある根管治療はもちろん、肉眼では確認できない歯の亀裂や、パーフォレーション(治療中に偶発的にできた穴)を発見することもできます。
リン
では、マイクロスコープを使うことで、より正確な治療ができるということでしょうか。
飯田先生
そうですね。そこに尽きると思います。あとは、より診断がしやすいです。
マイクロスコープとCTとで、誤診を防ぐことができます。「奥の歯が痛い」と、ずっと根の治療されていた患者さんでも、実際にマイクロスコープやCTで診てみると、手前の歯が割れていた、というケースもあります。
マイクロスコープを「使いこなせるかどうか」がカギをにぎる
リン
「根管治療」と聞くと、「大掛かりな治療」のイメージがあるのですが、実際はどうなのでしょうか?
飯田先生
いえ、根管治療はごく一般的な治療です。おそらく歯科医院に通っている患者さんの約3割は、根管治療を受けていると思います。
ちなみに、うちで根管治療をおこなうさいは、必ずマイクロスコープを使用します。
リン
3割も……想像以上に多いです。根管治療はそんなに一般的なのですね。
マイクロスコープを使うとなると、気になるのが治療費です。自由診療と保険診療の2種類あると聞いたのですが……?
飯田先生
5年くらい前までは、「マイクロスコープを使う治療は自由診療」としていたところも多かったですね。
でも、うちでは保険診療でもどんどん使っています。結局、マイクロスコープを使うと、痛みや炎症の原因が一目瞭然なので、治療が早く終わるんですよ。
なのでミスも防ぐことができますし。
リン
なるほど。つまりマイクロスコープを使うと、患者さんも先生もWin-Winの状態になるというわけですね!
それだけメリットがあるマイクロスコープですが、国内の普及率は約3〜4%と言われています。なぜここまで低いのでしょう?
飯田先生
まずは、「機材が高価」というシンプルな問題があります。あとは、導入してもトレーニングを続けないと使いこなせません。「宝の持ち腐れ」のようになっているところもあると聞きます。
私の場合は、以前勤めていた歯科医院がマイクロスコープを導入していました。やはり初めは使うのが難しかったですが、使いこなせるまでどんどん使っていきました。
リン
そうなのですね。では、マイクロスコープが導入されているかどうかだけでなく、使いこなせる歯科医師がいるかどうかも重要なのですね。
マイクロスコープを頼って遠方から通われる患者さんも
リン
マイクロスコープを使った治療では、実際にどのようなメリットがあるのでしょうか。再発のリスクが減らせるのでしょうか?
飯田先生
細かいところまで拡大しながら治療できるため、中に感染源を残したままになるリスクを減らすことができます。
また、歯間の見えにくい部分も、マイクロスコープを使うことで、「歯垢か虫歯か」などを判断できます。
あとは、例えば詰め物をするときに、セメントの取り残しも防げます。
取り残しがあると歯茎が腫れたり、歯周病の要因につながることがあります。マイクロスコープで見ると、意外と取り残しがあるものなんですよ。
被せ物をする際も、型取り前に歯の表面のボコボコしたところをきれいに削ることでスムーズに被せられます。
リン
本当に画期的ですね!
実際にマイクロスコープのある歯科医院に通う際、患者側から「マイクロスコープを使って欲しい」と希望しても良いのでしょうか?
飯田先生
それは構わないと思いますよ。ケースごとに「使用するか、しないか」の取捨選択があるとは思いますが、言っていただく分には問題ないでしょう。
リン
実際に患者さんからマイクロスコープの話題を出されるケースはありますか?
飯田先生
稀にありますね。
以前勤務していた新宿の歯科医院では、「保険適用でマイクロスコープを使ってもらえる」と、相模原から通っていらっしゃる患者さんもおられました。
リン
再発リスクが防げて、かつ治療が早く終わるのであれば、時間をかけて通われる気持ちもわかります。
マイクロスコープなしでは、「感覚」に頼るしかない
リン
お話を聞けば聞くほど、マイクロスコープは画期的だと感じます。
先生としては、やはり「マイクロスコープがある歯科医院に通ったほうがいい」と思われますか。
飯田先生
私はそう思います。
正直な話、拡大鏡では歯の根の先までは見えないのですよ。指先の感覚に頼るしかない。
ですから、できればマイクロスコープがある歯科医院で、より詳しく診てもらってほしいです。
リン
先生としても、一度マイクロスコープを使ってしまうと、もう戻れないということでしょうか。
飯田先生
そうですね。
正直、もうマイクロスコープなしで治療を行うのは「怖い」と感じます。
リン
やはりそうなのですね。私も今回のお話を聞いて、マイクロスコープを使用した治療を受けたいと思いました。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
インタビュー終了後、実際にマイクロスコープを覗かせていただいたのですが、ピントを合わせるのに非常に苦労しました。
改めて、歯科医院にマイクロスコープが導入されているかどうかだけでなく、使いこなせる医師が在籍しているかどうかも判断しなければならないのだと実感しました。
もしいま、「何度治療しても再発する歯の痛み」などに悩んでいる方がいれば、一度マイクロスコープを使用した治療を検討してみてはいかがでしょう?
飯田先生、この度は非常に勉強になるお話をありがとうございました!