胎児の心拍数はどのくらいで確認できる? 妊娠初期の赤ちゃんの平均心拍数や心音からわかること【医師監修】
妊娠初期には赤ちゃんが元気に育っているのか不安を抱える方も多いでしょう。
ここでは妊娠初期の胎児の心拍数や心音について紹介します。
目次
1.「心拍数」って何?
・胎児の心拍数はいつ頃から確認できるの?
2.胎児の心拍数はどうやって確認するの?
・妊娠初期から:超音波(エコー)検査で観察
・出産予定日近く:ノンストレステスト(NST)で観察
・市販の「心音計」やスマホアプリで心拍数はモニタリングできる?どれくらい正確?
3.赤ちゃんの心拍数はどのくらい?平均値や目安は?
・胎児の正常値の心拍数 平均値や目安
・胎児の心拍数が平均より早い(心拍数が180/分以上)
・胎児の心拍数が平均より遅い、弱い
・心拍数が安定していないとどうなる?
・心拍数が150より少ないと男の子?
4.赤ちゃんの心拍数が確認できない…。その原因は?
・原因①妊娠5週未満だから
・原因②胎嚢は確認できているが、流産している可能性がある
5.赤ちゃんの心拍数が確認できないとどうなる?
・妊娠5週未満で心拍数が確認できていない場合
・妊娠6週以降で心拍数が確認できていない場合
6.妊婦健診のときは、胎児の心拍数にも注目してみよう
この記事の監修医師
吉岡 範人先生
1978年千葉県生まれ。
聖マリアンナ医科大学産婦人科で研鑽を積み、カナダブリティッシュコロンビア大学へ留学をし、幅広い視野を獲得した。その後、聖マリアンナ医科大学へ帰院後、「つづきレディスクリニック」院長に就任。
丁寧な問診を通して一人ひとりの生き方の違いや年齢、ライフスタイルなどに寄り添い、すべての女性がいつまでも若々しく・活き活きと暮らすお手伝いができるレディスクリニックをめざしている。
医療法人社団都筑会 つづきレディスクリニック
神奈川県横浜市都筑区中川中央1丁目2-1 ヴァンクールセンター北4F
横浜市都筑区センター北駅から徒歩1分の婦人科・産婦人科「つづきレディスクリニック」。ピル・アフターピル(緊急避妊)、中絶の他、20種以上の診療メニューをご用意。
「心拍数」って何?
心拍数とは、心臓が1分間で動く回数のことを指します。
妊婦健診では胎児の心拍数を確認し、胎児の健康状態をチェックします。
胎児の心拍数はいつ頃から確認できるの?
妊娠すれば、妊娠4~5週で子宮内に胎嚢を確認することができます。
この時期にはまだ胎嚢は確認できても、まだ心拍は確認できません。
胎児の心拍数が確認できるようになるのは、妊娠5週後半~6週目です。
月数でいう妊娠2カ月に該当し、妊娠初期と呼ばれる時期です。
胎嚢の中の小さな胎児の中で心臓が動いている様子を見ることができます。
そして、病院では胎嚢・胎児・胎児の心拍が確認されることで、正常妊娠と診断されます。
胎児の心拍数はどうやって確認するの?
子宮に胎嚢ができていることが確認されると、心拍数の確認が行われるようになります。
胎児の心拍数はどのように確認するのでしょうか。
妊娠初期から:超音波(エコー)検査で観察
胎児の心拍数は、超音波(エコー)検査で確認します。
妊娠初期には「経腟超音波」という細い棒状のプローブというセンサーを腟内に挿入することで、モニターに胎児と心臓が映し出されます。
妊娠初期では子宮も胎児も小さいため、経腟超音波で子宮に近い場所から超音波をあてる方法が精度の高い映像を確認しやすくなっています。
そして、妊娠12週から15週頃になると「経腹超音波」という方法に切り替わります。
経腹超音波はお腹の外側から胎児の心拍数を調べる方法です。
また、ドップラー聴診器を使って耳で赤ちゃんの心音や心拍数を確認する場合もあります。
出産予定日近く:ノンストレステスト(NST)で観察
出産予定日が近くなれば、ノンストレステスト(NST)と呼ばれる検査で胎児の心拍数を調べます。
ノンストレステストでは、胎児の心拍数だけではなく、胎動や子宮収縮を同時に確認できます。
ノンストレステストは胎児の健康状態や、お産に耐えることができるか判断することができる検査です。専用装置をお腹に装着し、30~40分間ほど計測します。
一般的に妊娠37週以降から行われる検査ですが、胎児が小さい場合や何か異常が疑われるような場合には妊娠34週など早い段階から行われます。
市販の「心音計」やスマホアプリで心拍数はモニタリングできる?どれくらい正確?
胎児の心拍数を確認する家庭用の「心音計」や、心拍数を確認するためのスマホアプリなども存在します。
これらはお腹にあてて心拍数を確認することになるため、病院の経腹超音波を行うようになる妊娠12週頃から使うことができます。
そのため、妊娠初期では利用しても心拍数を確認することは難しいでしょう。
妊娠12週以降から利用した場合でも、病院の検査と比べれば精度は低くなっています。
そのため、正確性を求めるのであれば病院の検査をおすすめします。
使い方によってはうまく心拍数を確認することができない場合もあるので、利用する場合にはあくまでも補助的なアイテムと考えて利用すべきでしょう。
赤ちゃんの心拍数はどのくらい?平均値や目安は?
妊婦検診では心拍数の確認が毎回行われるため、心拍数について知っておきたいものです。
赤ちゃんの心拍数の平均値や目安を知っておきましょう。
胎児の正常値の心拍数 平均値や目安
胎児の心拍数は成長と共に変化するため、一定ではありません。
妊娠5週頃の初めて心拍数を確認できた時期では90~100回/分が目安です。
妊娠9週頃がもっとも心拍数が早くなる時期で、170~180回/分に増えます。
そして、妊娠16週頃には150回/分と落ち着いてきます。
ただし、これらの数値はあくまでも目安です。
胎児が起きて動いていれば数値は上がり、胎児が寝ていれば数値が下がります。
胎児の心拍数が平均より早い(心拍数が180/分以上)
胎児の心拍数が平均より早いと判断されるのは、心拍数が180回/分以上の数値の場合です。
一時的に心拍数が早くなっている場合もあり、このことを「一過性頻脈」と呼びます。赤ちゃんが元気に動いているため起こるものなので、正常な反応だと考えられます。
しかし、心拍数の高い状態が持続するようであれば、絨毛膜羊膜炎などの子宮内感染や母体の感染などが疑われます。
この場合には、抗菌薬の投与などにより治療が必要です。
また、何らかの原因で母体が発熱している場合にも胎児の心拍数が早くなることがあります。
胎児の心拍数が平均より遅い、弱い
胎児の心拍数が平均より遅い場合や弱い場合には、徐脈の可能性が考えられます。
心拍数が110回/分未満が10分間継続すれば、徐脈だと考えられることが一般的です。
妊娠初期の場合に心拍数が遅い状態が続けば、流産の可能性が疑われます。
検査のストレスや子宮収縮などで心拍が遅くなっている場合は一時的に心拍数が遅くなるため、問題はないと考えられます。
心拍数が安定していないとどうなる?
心拍数の速さに乱れがあり、安定しないような場合には「胎児機能不全」の可能性があります。
胎児機能不全とは、お腹の中の胎児が元気とは言えない状態を指します。
胎児が低酸素状態になることが原因で生じますが、その原因は子宮内感染や胎盤異常などさまざまな要因が考えられます。
胎児機能不全ではお腹の中にいるよりも外に出して育てた方がいいと判断されれば、早期段階でも帝王切開で出産になるケースもあります。
また、分娩時にもへその緒が首に巻き付くなど心拍数に乱れが生じ、帝王切開になることもあります。
心拍数が150より少ないと男の子?
胎児の心拍数で性別が判断できるという話を耳にしたことがあるという方もいるでしょう。
心拍数が150回/分よりも少なければ男の子、多ければ女の子と判定できるという話です。
しかし、この話に医学的な根拠はありません。
男の子でも心拍数が150回/分を上回っているケースもあれば、女の子で心拍数が150回/分を下回っているケースもあります。
あくまでも迷信なので、性別判定に関しては超音波検査で行うようにしましょう。
赤ちゃんの心拍数が確認できない…。その原因は?
赤ちゃんの心拍数が確認できないと不安になるものです。
赤ちゃんの心拍数が確認できない原因にはどのようなことが考えられるのでしょうか?
原因①妊娠5週未満だから
妊娠初期に胎児の心拍が確認できない原因として、妊娠5週未満でまだうまく心拍が確認できない時期だというケースが多いです。
妊娠の週数は最終月経を基準にして数えられます。
妊娠5~6週だと思って検査を受けても、排卵日が遅ければ妊娠週数は少なくなります。
そのため、妊娠週数にズレが生じ、まだ心拍が確認できる状態ではない可能性があるのです。
最初の超音波検査で心拍が確認できない場合には、1~2週間後に再度受診するように医師からも伝えられるはずです。
心拍が確認できないと焦らずに、次の受診日までリラックスして待つようにしましょう。
原因②胎嚢は確認できているが、流産している可能性がある
胎児が入っている袋である胎嚢は妊娠4~5週になると確認することができるようになります。
しかし、胎嚢が確認できたとしても、心拍数が確認できなければ流産している可能性もあります。
妊娠7週以降であり、心拍数が確認できなければ流産と判断されることが一般的です。
妊娠12週までの妊娠早期の流産の原因は染色体異常であることがほとんどなので、母親の身体や行動に問題があったというわけではありません。
腹痛や出血といった流産の症状がないケースも多いため、検診で流産を知ることも多くなっています。
赤ちゃんの心拍数が確認できないとどうなる?
赤ちゃんの心拍数が確認できない場合、どのように対処すべきなのでしょうか。
心拍数が確認できない場合の対処法は次の通りになります。
妊娠5週未満で心拍数が確認できていない場合
妊娠5週未満で心拍数が確認できない場合には、医師からも1~2週間後に再度受診するように伝えられるはずです。
妊娠5週未満では胎児が小さすぎるため心拍数をうまく確認できないケースが多くなっています。
そのため、妊娠5週後半~6週に入ってから再度確認することが望ましいです。
妊娠初期の週数の計算はズレが生じることも多いので、医師の指示従って再度検査を受けるようにしましょう。
妊娠6週以降で心拍数が確認できていない場合
妊娠5週後半~6週で心拍が確認できていたにも関わらず、妊娠6週以降に心拍数が確認できないような場合もあります。
とくに妊娠12週未満の場合は早期流産の可能性が考えられます。
妊娠すると出血や腹痛などの症状が見られることがありますが、出血量が多い場合や腹痛が強い場合には医療機関を受診することをおすすめします。
また、その他にも気になる症状がある場合には早期段階で医師に相談してください。
妊婦健診のときは、胎児の心拍数にも注目してみよう
妊婦健診では超音波検査で赤ちゃんの様子や心臓を確認することができ、赤ちゃんの成長を実感することができます。
とくに心拍数は赤ちゃんの健康を確認するための大切な指標になります。
そのため、妊婦健診では赤ちゃんの心拍数にも注目してみましょう。
妊娠中は身体の変化によりつらい時期もあるかもしれませんが、健康に気をつけながら妊娠期間を楽しんでくださいね。
※本記事は妊娠・健康・子育てに役立つ情報提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合には、ご自身の判断により適切な医療機関を受診し、医師にご相談ください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当サイトは責任を負いかねます。
妊娠検査薬で陽性反応が出たらまずは産婦人科を受診するでしょう。しかしそこで「胎嚢が見えない」「胎嚢が小さい」…なんてことを言われて一気に不安になってしまった…。よくあることではありますが、とても心配になってしまいますね。今回はそんな胎嚢について、詳しくまとめてみました。
妊娠初期によくあると言われる「腹痛」。よくあるとは聞くけれどもやっぱり大丈夫なのかと心配になるものです。その妊娠初期の腹痛について、痛みの特徴や、心配のないものから流産の可能性まで、さまざまな腹痛についてまとめてみました。
一般的に妊娠に気が付きにくいと言われている、妊娠超初期。しかし「なんだかいつもと違う」など、微妙な体の変化を感じる方もいます。妊娠超初期に起こりやすい症状や、気をつけたいこと、この時期の赤ちゃんの様子など、妊娠超初期に知りたい情報をご紹介します。