前駆陣痛はいつから起こる? 痛みの長さや胎動、吐き気などの症状を解説【助産師監修】
頻繁なおなかの張りを感じて、「お産が始まった!」と思ってしまうこともありますが、それほど長い時間は続かないことが多いです。前駆陣痛が来たときにも落ち着いて対処できるように、ここでは前駆陣痛の特徴をはじめ、出産時の陣痛との違い、過ごし方などについて詳しく説明します。
目次
1.前駆陣痛とはいつから起こる?間隔や長さなど
・前駆陣痛とはいつから起こる?
・前駆陣痛の間隔
・前駆陣痛の長さ
2.前駆陣痛の特徴(症状)
・前駆陣痛は痛い?
3.注意すべきおなかの痛み
・妊娠後期(~37週前)の痛みは病院に相談を
・前駆陣痛や本陣痛のときの胎動の感じ方
4.前駆陣痛はどんな痛み? 症状の具体例
・前駆陣痛の症状(例)
・前駆陣痛に吐き気はあるのか?
5.前駆陣痛と本陣痛の違いは?
6.前駆陣痛がきた時にはどう過ごす?
・まずはリラックスしてお腹の張りをチェック
・時間別の前駆陣痛
7.前駆陣痛がきたら焦らず気持ちの準備を
この記事の監修助産師
河井 恵美 先生
看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務、25年以上助産師を務める。
青年海外協力隊でアフリカに赴任、国際保健医療を学ぶために大学院に進学、修了。
お母さん方へのアドバイスを充実させたいと思い、保育士資格も取得。
現在、シンガポールに住み2人の子どもを育てつつ、現地の産婦人科に勤務して日本人の妊産婦さん方に携わる。
インターネットにてエミリオット助産院を開設中。
前駆陣痛とはいつから起こる?間隔や長さなど
前駆陣痛とはいつから起こる?
出産が間近になってくると、もうすぐ赤ちゃんに会えるワクワクする気持ちと緊張やプレッシャーが入り混じって複雑な心境になる方も多いと思います。そんな時期に起こりやすいのが、「前駆陣痛」です。
妊娠37週前後から出産までの間に、比較的頻繁に起こるおなかの張り(子宮の収縮)を前駆陣痛といいます。これまで感じていたおなかの張りよりも、頻度と強さが増すことが多いのですが、最終的にはおさまってしまうことが多いです。
(参考文献1)
前駆陣痛は、「陣痛かもしれない」と思ってしまうような子宮収縮があるので、焦ってしまう妊婦さんも多いものです。そのため、「偽陣痛」とも呼ばれています。前駆陣痛によって、子宮口がどんどん開いていくことはありませんが、子宮頸部(子宮口)が軟らかく開きやすい状態になるなど、出産の準備を整える働きがあると考えられています。
(参考文献1)
前駆陣痛の間隔
前駆陣痛は、10分以上の間隔で規則的なこともありますし、不規則なこともあります。〇分間隔だと前駆陣痛であるという区別はありません。
「いつもよりも頻繁で、規則的におなかが張る感じだったけど、何回かでおさまった」「不規則なおなかの張りで間隔が10分以下だったが、そのうちなくなった」ということもあります。
前駆陣痛の長さ
前駆陣痛は、「いつもよりも頻繁におなかが張るが、いつの間にか張りがなくなっている状態」です。その回数やおなかが張っている持続時間は、妊婦さんによって様々です。
回数は、2、3回の方もいれば、10回くらいという方もいます。繰り返す時間にしてもそれぞれで、20分以下の方から1時間ほどということもあります。おなかが張っている時間は、数秒~十数秒、1分前後という場合もあるのです。
前駆陣痛の特徴(症状)
前駆陣痛は痛い?
「前駆陣痛=子宮収縮=おなかの張り」です。前駆陣痛は、「痛い」という字が含まれていますが、「必ずしも痛いとは限らない」のです。もちろん、痛みとして感じる方もいます。初めは痛くなくても、前駆陣痛が本格的な陣痛に変わって、どんどん痛くなっていくこともあります。
前駆陣痛の感じ方は様々で、次のような特徴があります。
①おなかが張る感じでそんなに強くない
②おなかの張りの間隔は不規則か規則的でもある(不規則でも続かない)
③そのうちおなかの張りがなくなる
注意すべきおなかの痛み
妊娠後期(~37週前)の痛みは病院に相談を
妊娠の時期にかかわらず、動けないくらいの急なおなかの痛み、出血を伴うおなかの痛みがある場合は、医師の診察を受けることをおすすめします。
特に妊娠後期~37週になる前に、単なるおなかの張りではない痛みがある場合は、早産や他の合併症を起こしている可能性が考えられるため、かかりつけの病院に相談したり受診したりしましょう。
前駆陣痛や本陣痛のときの胎動の感じ方
前駆陣痛や本陣痛のときの胎動の感じ方には、ほとんど違いがありません。普段通りに赤ちゃんが動いていることが多いです。
出産間近だからといって、決して胎動がなくなることはありません。
おなかの張りや痛みがあるときに、赤ちゃんが動いているかどうか、極端に胎動が少なくないか、普段の胎動との違いなども確認できるといいですね。いつもよりも極端に胎動が少ない場合は、かかりつけの産院に相談してください。
前駆陣痛はどんな痛み? 症状の具体例
前駆陣痛の症状(例)
前駆陣痛の具体的な感じ方には次のようなものがありますので、参考にしてください。
① おなかの張るような違和感・痛み
② 生理痛のような痛み・おなかが重い感じ
③ 下痢、便秘の時のような痛み
④ 腰痛・腰が重い感じ・腰がだるい感じ
⑤ 赤ちゃんがおなかを蹴っているような感じ
⑥ 気づかないこともある
前駆陣痛の感じ方は色々でも、「おなかを触ると硬いこと」は共通しています。
「前駆陣痛かな」と思ったら、おなかに手を当てておなが硬くなっているかどうかを確認してみましょう。
おなかがやわらかい場合は、子宮が収縮しているのではなく、赤ちゃんや腸の動き、単なる腰痛であることが多いです。また、前駆陣痛に気が付かない妊婦さんや前駆陣痛がない方もいますが、特に心配はありません。
前駆陣痛に吐き気はあるのか?
前駆陣痛の主な症状の一つとして吐き気は含まれていませんが、大きくなった子宮が前駆陣痛を起こした場合、近くにある胃が刺激されるため、吐き気を感じることがあるかもしれません。
特に、食事の後に前駆陣痛が起こった場合は、胃痛や吐き気を感じやすいでしょう。
前駆陣痛と本陣痛の違いは?
前駆陣痛は、気がついたらおなかの張りがなくなっていることが多く、頻繁に感じていたとしてもその後が続かないものです。
本陣痛は、10分〜10分以下の間隔で子宮が収縮することです。一般的に、10分間隔の陣痛が1時間ほど続いた時点で出産の始まりと考え、初産婦さんはこのタイミングで入院します。経産婦さんは少し早めの陣痛が15分おきのときに入院します。
その後、陣痛は徐々に強くなり間隔も短くなって、赤ちゃんを産み出す力になっていくのです。初めは、生理痛のような比較的軽いおなかの張りとして感じることが多く、痛くないこともあります。その点では、本陣痛と前駆陣痛を明確に区別するのは難しいです。
前駆陣痛と本陣痛は、「規則的に」「持続するかどうか」が違います。本格的な陣痛は、規則的に持続しながらだんだん強くなっていくため、前駆陣痛やいつものおなかの張りとは違うものです。
よく妊娠後期の妊婦さんから、「陣痛が始まったら、ちゃんとわかるでしょうか」と質問を受けることがあります。安産の方でも、本陣痛を感じずに赤ちゃんが生まれるということはありません。妊婦健診のときに2〜3cm程度子宮口が開いている状態でも、前駆陣痛だけで子宮口が全開(直径10cm)していたということはないので安心してください。本格的な陣痛が起こらなければ子宮口は全部開かず、出産にはなりません。
前駆陣痛がきた時にはどう過ごす?
まずはリラックスしてお腹の張りをチェック
前駆陣痛のときには、どう過ごしたらよいのか気になりますね。まずは、できるだけリラックスして、おなかの張りが規則的であるかどうかを確認してみましょう。規則的であるようなら、時間を測ってみてください。不規則なら、様子を見て大丈夫です。
腰が重だるい、下痢のような痛みのような感覚の場合は、おなかに手を当てておなかが硬くなっているかどうかを確認してみてください。おなかがやわらかい場合は、前駆陣痛ではない可能性があります。
時間別の前駆陣痛
昼間に前駆陣痛が来た場合、普段通りに過ごしてもらっても大丈夫です。食事や家事、その他にやりたいことがあれば、そのことをしながら過ごすことができます。
夜であれば、眠ってしまっても大丈夫です。眠れるようだと、前駆陣痛が徐々におさまっていった可能性が高いです。気になって眠れないほどのおなかの張りであれば、時間を測ったりリラックスできる姿勢で過ごしてください。
前駆陣痛があってもベッドに横になる必要はありませんし、反対に無理に動く必要もありません。自分にとって楽な姿勢で過ごすのが一番です。お母さんがゆったりとリラックスしていると、赤ちゃんも心地よく過ごすことができます。
また、前駆陣痛のときには呼吸法は不要です。普通の呼吸をして、息を止めたり身体に力を入れたりしないように過ごしてください。
前駆陣痛がきたら焦らず気持ちの準備を
前駆陣痛がきたら、焦らずにまずは体の力を抜きましょう。気持ちを落ち着けて、動けるようであれば動いても大丈夫です。入院の時の持ち物を確認をしたり、入院のタイミングについてイメージトレーニングしたり、出産に向けて心の準備をしましょう。
前駆陣痛があるとちょっと緊張するかもしれませんが、できるだけゆったりとした気持ちで本格的な陣痛を待てるといいですね。
【参考文献】
1. プリンシプル産科婦人科学2 産科編(第3版)メジカルビュー社 P111・P256
※本記事は妊娠・健康・子育てに役立つ情報提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。
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