【助産師監修】妊娠初期に下痢をするのはなぜ?腹痛がひどく冷や汗が…流産の可能性は?
妊娠初期には下痢に悩む方も多いものです。
ひどい腹痛で流産していないかと不安になることもあるでしょう。
ここでは、妊娠初期の下痢の原因や対処法についてご紹介します。
この記事の監修助産師
朝澤恭子(あさざわ きょうこ)先生
東京医療保健大学東が丘看護学部准教授。看護学博士、助産師、看護師。
研究テーマは産褥早期の母親へのアロマトリートメントなど。
オンラインで産後の母子に対するベビーマッサージ、育児相談のクラスを運営している。
東京医療保健大学は、変化を恐れず、変化を力に成長しつづける医療人づくりを目指しています。医療保健学部(看護学科、医療情報学科、医療栄養学科)、東が丘・立川看護学部の2学部を設置し、チーム医療を担う、医療の専門家を育成します。
妊娠初期の下痢、その原因は?
妊娠すると、女性は体にさまざまな変化が現れます。
その変化のひとつとして、妊娠初期にはお腹がゆるくなってしまうという方もいます。
妊娠初期に下痢が起こりやすい原因として、次のことが挙げられます。
つわり
妊娠初期にはつわりが起こる方もいます。
吐き気で普段の食事ができなくなってしまったり、特定の食べ物を受け付けなくなったりと、症状には個人差があります。
食事を摂ることが大変なので、ゼリーやアイス、冷たい飲み物などスッキリとした食べ物や飲み物ばかりを選んで食べてしまうという方も多いでしょう。
しかし、こうした冷たい食べ物ばかりを食べていると、下痢を起こしやすくなってしまいます。
妊娠初期はホルモンバランスが乱れていることが影響し、体が冷えやすくなっています。
そのため、普段ならば冷たい食べ物や食べ物で下痢を起こしにくいという方でも、妊娠初期では下痢を起こしやすいと言えます。
食の乱れ
妊娠初期には食の乱れが生じやすくなります。
妊娠前とは食の好みが変わり、普段は食べない物を好むようになるということは珍しくありません。
とくに、揚げ物やジャンクフードなどの油っぽい食べ物や、味の濃い食べ物を妊娠初期には食べたくなるという体験談もあります。
こうした油っぽい食事や味の濃い食べ物は消化不良を起こしやすく、下痢を引き起こす原因になります。
また、食べづわりを起こしている方であれば、普段よりも食事量が増えてしまいます。
食事量が増えれば消化不良を起こし、下痢と便秘を繰り返すようなこともあります。
妊娠初期 下痢とともに起こりやすい症状
妊娠初期には下痢が起こるだけではなく、下痢とともに腹痛や出血などさまざまな症状が現れることがあります。
下痢以外にも症状があると、何かお腹の赤ちゃんに悪いことが起こったのではないかと不安になってしまいますよね。
そこで、下痢とともに起こりやすい症状と原因について知っておきましょう。
腹痛
妊娠初期は医療機関で確認された妊娠の15%前後に流産があると報告されており、腹痛が起こると「流産したのではないか」と不安に思うママも多いでしょう。
下痢とともに腹痛が症状として現れた場合には、腸の動きによる腹痛であると考えられます。
妊娠初期には下痢を起こしやすく、消化管が伸縮や痙攣することで痛みが生じます。
すぐに治まるような下痢であれば問題ありませんが、下痢と腹痛が長引く場合や、発熱を伴う場合には細菌性感染症やウイルス性感染症の恐れがあります。
これらの感染症は家族間で感染が拡大してしまう恐れもあるので、早急に医療機関を受診するようにしましょう。
吐き気(嘔吐)
下痢だけではなく、吐き気や嘔吐を伴う場合には「妊娠悪阻(にんしんおそ)」に罹っている可能性があります。
妊娠悪阻とは、つわりが重症化したものです。
頻繁に吐き気や嘔吐、食欲不振が起こることで脱水や栄養代謝障害を生じてしまいます。
さらに重症化すれば意識障害を生じる恐れもあるので、嘔吐や体重減少が続く場合には早急に医療機関で受診するようにしましょう。
また、下痢と一緒に吐き気や発熱などの症状が伴う場合には、ウイルス性腸炎や食中毒などを発症している可能性もあります。
下痢や嘔吐が数回続いても症状が改善しない場合や、高熱が出た場合には赤ちゃんへの影響も考えて早期受診することをおすすめします。
出血
下痢とともに出血が起こっている場合は、出血箇所によって出血原因が異なります。
肛門からの出血の場合は、肛門の粘膜や皮膚が切れてしまっていることで出血しているだけの可能性があります。
しかし、胃や腸に異常がある可能性もあるので、出血が続く場合や、便に出血が混ざる場合には医療機関での検査が必要です。
また、性器からの出血がある場合には、さまざまな可能性が考えられます。
妊娠初期では着床出血と呼ばれる出血が起こることもあれば、妊娠で血流が増えることで少しの刺激で傷がついても出血しやすくなります。
こうした出血であれば問題ありませんが、出血量が多い場合や、下腹部の張りや痛みが伴う場合には切迫流産の可能性があります。
翌日あるいは予定された健診の受診で、必要な検査や治療を受けるようにしましょう。
心がけて。妊娠初期の下痢対策
妊娠初期にはつわりなど体調が変化することで辛い思いをする方は多いでしょう。
ただでさえ辛いのに、下痢まで続くことは避けたいものです。
そこで、妊娠初期の下痢を改善・予防するためにできることをご紹介します。
食事時間
妊娠初期にはつわりや体調不良などが起こりやすいため、「食べられる物を食べたい時に食べておく」という食事の摂り方をしている方も多いでしょう。
しかし、一度の食事量や水分摂取量が多いと胃や腸への負担が大きくなり、下痢を起こしやすくなります。
まとめて一度に食べるのではなく、1回の食事量を減らして、1日の食事回数を増やすような食事方法を心掛けるようにしましょう。
そうすれば、胃や腸への負担が軽減されるため、下痢を起こしにくくなります。
消化の悪いものは控える
消化の悪い食べ物ばかり食べていると、消化が上手くできずに下痢を起こしてしまいます。
妊娠すると揚げ物やジャンクフードなどの油っぽい食べ物が食べたくなりますが、油っぽい食べ物は消化が悪いので下痢を起こす原因になります。
お腹の調子が悪い時には油っぽい食べ物は避け、お粥やうどんなど消化の良い食べ物を選ぶようにしましょう。
その他にも、りんごやバナナ、豆腐も消化しやすい食べ物として挙げられます。
つわりや下痢で水分量が減っていると感じる場合には、みそ汁もおすすめです。
みそ汁ならば水分も栄養もまとめて補給することができます。
体を冷やさない
妊娠初期にはホルモンバランスが乱れてしまい、体温調整が上手くできなくなることで体が冷えやすくなってしまいます。
そのため、体が冷えないように日頃から心掛けることが下痢予防に繋がります。
腹巻や靴下を履くなどして冷えやすい部分は温かくすることを心掛け、クーラーの下に長時間いることを避けましょう。
また、冷たい食べ物や飲み物は体を内側から冷やしてしまい、下痢を招きやすくします。
つわりでサッパリとした冷たい食べ物や飲み物が食べやすくなるという気持ちも理解できますが、食べ過ぎれば冷えを加速させてしまいます。
冷たい食べ物は食べすぎないように注意し、体を温める食事を摂るようにしましょう。
生姜は体を内側から温めてくれる食材なので、生姜を使ったスープなどがおすすめです。
水分補給
下痢をすると、体から水分が失われてしまいます。下痢が続けば大量の水分が失われるため、脱水症状を起こす恐れがあるのです。
とくに妊娠初期はつわりによって食事量が低下しているため、ひどい下痢を起こすことで一気に脱水症状を引き起こすこともあります。
そのため、水分補給はしっかり行うようにしましょう。
ただし、一度に大量に水分を補給することや、冷たい飲み物を飲むことは、腸を刺激することで下痢を誘発してしまう恐れがあります。
少量をこまめに水分補給するようにし、常温やぬるま湯程度の水を飲むようにしましょう。
妊娠初期に下痢と便秘を繰り返すのはなぜ?
妊娠すると、腸の動きが鈍くなってしまいます。
腸の動きが鈍くなれば食べた物が下に下がるスピードが遅くなるだけではなく、大腸の中に長く留まることになるため、便は硬くなってしまいます。
さらに、つわりによる食事量の低下や運動量が減ってしまうことも加わり、便は体内に溜まりやすくなってしまいます。
そこに、冷たい食べ物や脂っぽい食べ物など胃や腸を一度に食べることで、急激に腸が刺激されてしまいます。
そして、体内で溜まっていた便の中でも手前にある柔らかい便が排出されていくため、下痢が起こります。
妊娠初期の下痢と便秘は表裏一体であり、便秘にも注意しながら下痢予防を行う必要があります。
妊娠初期の下痢は流産につながるの?
妊娠初期に下痢が続くと赤ちゃんに影響があるのではないかと不安になる方も多いでしょう。
妊娠12週未満で起こる初期流産は、受精卵の染色体異常が原因であることが大半です。
染色体異常によって育つことができずに流産してしまうため、下痢が原因で流産をするということはほとんどないと言えます。
下痢の多くは急性のものなので、一時的に下痢が起こっても数時間~数日で改善します。
軽度の下痢であれば赤ちゃんへ直接影響が出るようなことはほとんどないと考えられます。
しかし、感染症などが原因で重度の下痢が長引くような場合には、母体の衰弱によって赤ちゃんに影響する恐れがあります。
そのため、一時的な下痢ではない場合や、気になる症状がある場合には病院を受診するようにしましょう。
まとめ
妊娠初期には妊娠準備のために体が大きく変化します。
妊娠初期に下痢が多いことも体の変化の1つであり、多くの場合は赤ちゃんに影響を与えるような深刻なものではありません。
つわりが辛いからといって冷たい食べ物ばかり食べるのではなく、消化の良い食べ物を小分けに食べるようにし、体を冷やさないようにすることが大切です。
下痢になってしまった時には脱水が起こらないように十分に水分を補給するようにしましょう。
一時的な下痢であれば問題ありませんが、下痢以外の気になる症状がある場合や、普段の下痢とは違うと感じる場合には、医療機関で診てもらうようにしましょう。
※本記事は妊娠・健康・子育てに役立つ情報提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合には、ご自身の判断により適切な医療機関を受診し、医師にご相談ください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当サイトは責任を負いかねます。