保育園乳児クラスで多発する”カミカミトラブル”
保育園の1~2歳児クラスでよくある「噛んだ」「噛まれた」というカミカミトラブル。まだ言葉を十分に話すことができず、自分の想いを伝えられない子供たちが、自分の「いやだ!」という気持ちを伝えるために噛んでしまったり、お友達とのコミュニケーションの中で「貸して」が言えずにおもちゃを奪ってしまった時に噛まれるなどのケースが多いようです。
実際に筆者の子供が1歳~2歳のころには、保育園で「噛まれてしまいました」「お友達を噛みました」と報告されることがありました。「噛む」という行為は大人にとって理解しにくく、どうしてそんなことをするのかわからないというのが正直な思いですよね。
そんな時、ママはどんな対処法ができるのかをご紹介します。
子供が「噛む」「噛まれる」原因
なぜ噛んでしまうのか、噛まれてしまうのかという原因は、もちろん1つではありません。その子のその時の状況により、いろいろケースがあります。しかし、先生いわく共通して言えることは「コミュニケーション能力が未発達」ということ。それは、その子が特別未発達なわけではなく、1~2歳の子全般に言えることです。
子どもは1歳半を過ぎた頃から明確な自我が芽生えてくるといわれています。「自分が・・・」や「自分のおもちゃ」という自己主張が出てくる時期なのですが、言葉はまだまだ未熟な時期、言葉の代わりにからだで表現しているのが、噛みつきやひっかきだと考えられます。
出典:www.the0123-lab.com
1歳半をすぎると子どもたちはどんどん自己主張が激しくなりますね。それが「自我の芽生え」なのだそうです。自我が出てくることは発達の過程でとても大切なことです。
そんな「自我」を表現するとき、自分が相手に嫌なことをされたら「いやだ!」と口に出せればいいのですが、その思いを言葉に出せず、イライラした思いだけが心の中で爆発してしまい、相手に対して「噛みつく」という行為に出てしまうことも。
また、噛まれてしまう方も、相手が使っているおもちゃや、食べているものを「ほしい」という思いが先行して「貸して」ということや、相手が使っているという状況を見ることができず、結果として横取りしてしまうことから、相手に噛みつかれてしまいます。
園で"かみつき"がでているお子さんは、父母に対してもかみついていることも多いようです。両親は、愛情表現やふざけっこと受け止めていることも少なくありません。0歳児での"かみつき"の始まりは、コミュニケーションの一部であることが多いのです。子どもたちが"かみつき"によってどんな思いや願いを表現しようとしているのかを大人が深く理解することが、対応を考える出発点となります。
出典:oumanooyako.sakura.ne.jp
家ではパパとママとのかかわりがほとんどでしたが、保育園に入ると周りにはお友達がたくさん。「お友達と遊んでみたい」と興味が出てくる子どもたちですが、まだ上手に関わりあうことができません。子どもとしてはコミュニケーションや遊びの一環として「噛みつく」という行為をしてしまっていることもあるようです。自宅で両親に対して甘噛みしていても「ふざけている」と捉えてしまうこともありますが、保育園の子供同士になると、それがトラブルとして出てきてしまうことも。
また、クラスの中で特定の子同士でトラブルになりやすいケースもありますが、それは大好きなおもちゃの種類が一緒だったり、同じものに興味を持っているからなのだそう。そのため、ある程度の月例をすぎてコミュニケーション力が育ってくると、仲良しになるケースが多いのだそうです。
筆者の子供たちの通う園の保育士さんも「トラブルになりやすい子は、裏を返せば自分の興味のあるものに積極的に向かっていけるタイプで、お友達と同じスペースで一緒に遊ぶことに抵抗がないタイプ。コミュニケーション力が低いわけではなく、これから伸びしろが大きいんですよ。」と教えてくれました。
関わり合いは、おしゃべりや楽しい遊びを通してしていけるように、大人が子どものコミュニケーションの架け橋になってあげられるといいですね。
1、2歳の子どもでもストレスがたまってしまうことがあります。保育園に入りたての時期は疲れとともにストレスがたまってきたり、ママやパパの仕事が忙しい時期、コミュニケーションが取れずにイライラしてしまうことも。
一般的に「噛む」ということと、愛情不足やストレスは関係ないと言われていますが、実際に保育の現場では子どものストレスが「噛む」という行為に繋がっているのではないかという意見も。
あるブログでは、1歳後半の噛み癖が治まらない女の子について、こんなことが書かれていました。
おうちでの様子を聞いていると、その子はお母さんに甘えてくる様子。
でもそもそもゆっくり触れ合う時間もないし、
お母さんは「子どもが好きではないし、関わり合い方が分からない」とお話されていました。
(お父さんはお母さんよりお仕事が忙しく、子どもが寝ている時間しか家に居ない状態でした)
特別な関わり合い方や言葉掛けはいりません。
だから抱きしめてあげて下さい。
私達保育士がお願いしたことはこれでした。
子どもの日中の様子&お母さんからの話を聞いて
甘えられる場、落ち着ける場
を子どもが欲しているんだと思いました。
それは私たち保育士が作ったものじゃ足りなかったんです。
やっぱり大好きなおうちの人に甘えたかった。。。
それからお母さんは仕事量を減らして早くお迎えに来れるように工夫してくださったり、
日常的に触れ合う機会を増やすよう努力してくださいました。
しばらくすると、驚くほど噛みつくことがなくなりました。
その子は落ち着いて生活できるようになって、笑顔も見せてくれるようになりました。
出典:ikuji.direzione-nv.com
働きながら子育てをしていると、なかなかコミュニケーションをとる時間がつくれないですよね。ヘトヘトになって帰ってきて、食事を作り、お風呂に入れたころには親のほうが疲れてしまい「早く寝かせよう」となってしまいます。
しかし、こうした事例を聞くと、母親として子どもの心の声を聞き逃してはいけないと感じます。時間のない中でも子どもに愛情を伝え続けること、抱きしめることが大切なのですね。
トラブルを減らすためにママが子どもに対してできることは?
では、自宅でパパやママができる、子どもの噛みつき、噛みつかれへの対処はどうしたら良いのでしょうか?
かんだ子に対しては、一方的に注意するのではなく、状況を把握し、まずは、「~が欲しかったんだね」「~したかったんだね」と伝えたかった気持ちを代弁し、気持ちを受け止めるようにします。そして、その後で、かむという行為は、「してはならない事だ」という事をはっきり注意します。
出典:oumanooyako.sakura.ne.jp
子どもが嫌な気持ちを消化しきれずに興奮状態になってしまったら、気持ちを消化させてあげられるようにしましょう。
「くやしい!」「いやだ!」「あれがしたかったのに!」そんな子どもの思いをママが代弁し、イライラに共感してあげます。「この気持ちは『くやしい』なのか…」「いやだ!って、言えばいいんだ」と、子どもは自分の気持ちの表現方法を学びます。
そして、実際に噛んだり手が出てしまった場合には「あなたの気持ちはわかったけど、噛む(手を出す)のは痛いから、だめだよ」と、噛む行為はいけないと知らせます。噛むことを頭ごなしに叱るのではなく、本人の想いに理解を示してあげることが大切ですね。
同様に、噛まれてしまう子の場合は、噛まれてしまう状況を保育士さんに確認し、その状況になったとき、どんな言葉を使えばいいのかを教えてあげましょう。おもちゃを取ってしまう場合は「貸して」「あとで貸してね」、ついお友達を押してしまう時は「どいてね」「通らせてね」など。順番を待つことを教えることも必要ですね。
自分の思いを人に伝えられるようになることから、コミュニケーションはスタートします。筆者の子どもの場合でも「やめて」「いやだ」が言えるようになると、とっさに噛みついたり手を出すことが少なくなっていました。
噛みつきそのものの原因は、愛情不足やストレスではないと言われています。
しかし、噛みつきの起きやすい原因として、子どもの不機嫌やイライラが影響しているとすると、日常生活での情緒の安定は大切な要素だといえるでしょう。
保育園に子どもを預けて、毎日朝から夜まで働いているママ。そのこと自体が愛情不足になることは決してありません。自宅に帰ってからでも、子どもに愛情を伝えてあげることはできます。短時間の中でも毎日抱きしめて「愛しているよ」と伝えてあげる時間がとれるといいですね。
子どもは両親のことをとてもよく見ています。忙しく働く中でも、子どもを愛している思いを持っていれば、子どもにはその愛情は必ず伝わります。
そして、大前提は「コミュニケーション能力の未発達」と「お友達との関わり合いのはじまり」として噛みつきが起こっているということ。わが子が噛みつきを行ったからと言って、ママは自分を責める必要はありません。
多くの場合は3歳ごろまでに治まっていきます
たたく、かむ、髪をひっぱるなど、相手を傷つける攻撃的な行動が目につく時期。親や身内に、それが向かっていっているうちはいいけれど、目の前でよその子や友だちに、わが子がそんなことをすると、親としては気が気じゃありませんよね。この子は何か問題があるのではないか、将来、乱暴な人間になってしまうのではないか、だれからも嫌われてしまうのではないか、と心配されるのもわかります。
しかし結論から申し上げれば、この時期の攻撃的な行動は、相手を傷つける意図がほとんどありません。そして3才ごろになると、おさまるものなのです。
常に子どもを監視して、ちょっとでも乱暴なことをするのをこまかく注意する必要はないと、まず最初に申し上げておきましょう。
すなわち、1~3才までの幼児期の攻撃的な行動は、それ以降の児童期における問題行動とは全く別。まず心配するには及びません。
出典:baby.goo.ne.jp
噛むことをはじめ、ひっかく、たたく等の行為は、大人から見れば「暴力行為」。そのままにしておいては、暴力的な子になるのではと心配になるママもたくさんいると思います。
しかし、実際には子供にとってのそれらの行動は「感情表現」であって、相手にケガをさせようだとか、傷つけてやろうという思いは一切ありません。そして、自分がそれ以外の行動で気持ちを表せるようになると、自然に治まっていくのです。ママとしては噛む行為そのものを叱ることよりも、感情の表現を豊かにできるように、声掛けや会話をたくさんしていくようにする方が、早く行為が治まるかもしれませんね。
ママにとっては頭の痛い「噛む」「噛まれる」という問題ですが、すべては子どもの成長の一過程。それを過ぎると、保育園でたくさんの友達と笑いあい、時には思いやる姿も見られるようになります。子どもたちが上手にコミュニケーションが取れるようになるまで、そっとサポートしてあげたいですね。