森で過ごし、森から学ぶ
「森のようちえん」はドイツ語の「Waldkindergarten(wald=森)(kindergarten=ようちえん)」から来ており、自然の中で幼児教育や保育活動を行う団体のことを指します。
発祥の地デンマークからスカンジナビアを経て他のヨーロッパ地域へ、それからアメリカや日本にも10年ほど前から広がりました。
ちなみに「森のようちえん」の数がいちばん多いのはドイツだそうです。
既存の幼稚園に飽き足らず、子どもを自然豊かな環境で育てたいと思う保護者が多く、ドイツ国内だけでおよそ300ある。
出典:bizmakoto.jp
子どもたちはよほどの悪天候でない限り、一年を通して一日の大半を森林の中で四季折々の自然と触れ合って過ごし、そこで様々なことを学んでいきます。
筆者はイギリスのスコットランドとアメリカのニューヨークで、娘たちを森のようちえんに通わせました。
ニューヨークのコンクリートジャングルの中で生まれ育つ娘たちを見て「今この時期に自然の中で思いっきり遊ばないで、いったいいつ遊ぶの?」という疑問と焦りを抱いたこと。
そして五感がいちばん発達すると言われている幼児期に、自然の持つ美しさと怖さを子どもたち自身の肌で直に感じてもらいたかったから、というのが主な理由です。
またそうした体験が、これから長い人生を歩んでいく上で娘たちの「生きる力」というかけがえのない宝物につながっていくのではないかという予感もありました。
森の幼稚園に通う子どもたちは通常の幼稚園児に比べ「表現力が豊か」「コミュニケーション能力が高い」「体が丈夫」「情緒が安定している」といった特徴を持つ。
反面、文字や数字に触れる機会が少ないので小学校に上がると遅れをとるが、その差は数カ月で埋め合わせができるという。
就学年齢に達した段階での多少の学力差より、長い人生の基礎となる幼児期を豊かな自然で過ごすことを保護者は重要視している。
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1. スコットランドの森のようちえん
出典:petitetiare.blog98.fc2.com
長女が4歳、次女が2歳だった2013年から2014年にかけて一年間過ごした、イギリス・スコットランド。
娘たちが生まれたニューヨークとは違い、周囲には自然豊かな環境が広がっていました。
いつも遊びに行っていた、家から徒歩10分ほどの大きな森の中に「Woodland Outdoor Kindergartens」という森のようちえんがあると聞き、見学させてもらったところその素晴らしい環境に魅せられ入学することに。
知った時期が遅かったので数ヶ月しか通えなかったのが残念でしたが、とてもいい経験をさせていただいたと思っています。
一日の流れはだいたいこんな感じです。
朝8時から9時の間に集合場所となっている教会に子どもをドロップオフし、子どもたちはそこでレインスーツと長靴に履き替えてお手洗いを済ませた後、スクールバスで森に出発します。
サークルタイムのあとはそれぞれが森で好きなように遊んだり、ブランコなどの遊具を作る先生方のお手伝いをしたり。
ちなみに、トイレは上の写真のテントの中に設置されているので、各自で必要な時に利用できます。
タンクの水とせっけんで手をキレイに洗った後は、みんなで輪になってお昼ご飯。
午後に再び自然の中で思いっきり活動をしたあとは泥だらけのままスクールバスに乗り、再び教会へ戻ります。
そこでレインスーツと長靴を脱いで普通の靴に履き替え、夕方5時頃のお迎えを待ちます。
その頃の私のいちばんの楽しみは、教会から家までの帰り道に泥だらけの姿で目を輝かせて語ってくれる、娘たちの森の大冒険についての話を聞くことでした。
「なんてかけがえのない素敵な時間だったのだろう」と、その時の光景を今も時折懐かしく思い出します。
2. ニューヨークの森のようちえん
ニューヨークにも「森のようちえん」の活動をしている学校がいくつかあります。
まずはブルックリンのプロスペクトパークを拠点として始まり、近年はマンハッタンのセントラルパークでも教室を開催している「Brooklyn Forest」
小さい頃からずっと一緒の学校に通っていたという、幼なじみ同士の夫婦が自分たちの子どもを自然の中で育てたいとクラスを始めたんだそう。
セントラルパークのクラスに次女と一緒に参加したことがありますが、そこら辺に落ちている木の枝や葉っぱなどを組み合わせてあっという間に小さなボートを作ってくれたり、自然のもので染めた布と枝を組み合わせて遊び場を即席で作ってくれたりする先生方から、自然のものを使って遊ぶ楽しさを教えていただきました。
出典:www.facebook.com
また、お手製の素朴な焼きたてパンとアップルバター、ハイビスカスのお茶も美味しく、親子でゆったりとした素敵な時間を過ごすことができます。
次はBrooklyn Forestと同じように、ブルックリンのプロスペクトパークから始まった「Thinkergarten」
こちらはleader(リーダー)と呼ばれるインストラクターを多数養成し、マンハッタンのセントラルパークはもちろん、ニューヨーク市各地の公園や郊外にもどんどんその活動範囲を広げています。
娘たちを連れて参加した日のクラスのテーマは「mud(泥)」
皆で土を掘ってそれに水を加えて泥を作り、そこから創造できる様々な遊びを楽しみました。
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「Thinkergarten」のウェブサイトでは、四季折々に楽しめる様々な自然アートやアクティビティが紹介されているのも嬉しい♡
ぜひお子さんと外で遊ぶ時の参考にしてみられてくださいね。
3. 日本の森のようちえん
日本でもその自然豊かな風土を生かし、10年ほど前から森のようちえんが全国的に広がってきています。
日本では2005年から毎年「森のようちえん全国フォーラム」が開催されている。2008年11月、「森のようちえん全国ネットワーク」設立。
出典:ja.wikipedia.org
「森のようちえん全国ネットワーク」のウェブサイトでは、都道府県別に森のようちえんの活動を行っている団体を検索することが可能です。
また、森のようちえんに関する様々な書籍もあるようですので、ご興味のある方はまず本を読むことから始めてみるのも良いかもしれません♪
出典:www.amazon.co.jp
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世界中で実践されている森のようちえんの活動、いかがでしたでしょうか?
子どもたちは一年を通して同じ森に出かけることで厳しくも美しい自然の中で様々ないのちと出会い、それらと触れ合いながら想像力と五感をめいっぱい鍛えることができます。
自然への畏敬の念、自立心と自信、そして自分たちを見守ってくれる大人たちへの信頼感を培い、暑さ寒さや雨など自分でコントロールできないものの存在を感じ、危険も含めた自然環境の中で自分自身の限界を知るという経験は、未来を担う子どもたち一人一人の「生きる力」となっていってくれることでしょう。
もしお住まいの地域に森のようちえんの活動をされている園、もしくは週末の自然体験などを主催している団体があれば、ぜひお子さんとご一緒に参加されてみてはいかがでしょうか?