妊娠初期の胃痛「キリキリ胃が痛い…」その原因は?薬は飲める?対処法や注意点を解説【医師監修】
妊娠初期に胃が痛むと、赤ちゃんに何か影響はないのかと不安になりますよね。
今回は、妊娠中のキリキリとした胃の痛みについて解説していきます。
目次
1.妊娠初期の胃痛、みぞおちが痛い…。その原因は?
・つわりの一種
・プロエストロゲン(黄体ホルモン)の影響
・ストレス
・胃腸の病気の悪化
2.妊娠初期の胃の痛みは、流産につながる?
3.胃が痛む時、薬を飲んでも大丈夫?
・飲み慣れた市販薬でも自分で判断せず、医師・薬剤師に相談を。
・妊娠初期の胃痛 飲めない薬、飲める薬
4.妊娠初期に胃が痛む…。病院へ行く判断基準はどこ?
・激痛、嘔吐・吐き気、下痢、出血などを伴う場合はすぐに病院へ!
5.日常生活で胃の痛みを和らげる方法
①深呼吸や気分転換…。常に「リラックス」を心がけて
②締め付けの強い下着・衣服は避けましょう
③効果的なお腹マッサージ
④ゆっくり湯船に浸かろう。シャワーだけはNG!
6.「食事療法」で妊娠初期の胃の痛みを和らげよう
・胃痛を和らげる、おすすめの食べ物・飲み物
・痛みが悪化することも。避けるべきNGな食べ物・飲み物
7.胃痛以外にも妊娠初期に起こりやすい症状
8.まとめ
この記事の監修医師
松尾 愛理 先生
大阪大学医学部卒業、産婦人科専門医。春木レディースクリニック勤務。
3児の母として、妊婦さんやママさんに寄り添い、分かりやすく様々な情報をお伝えしていけたらと思います。
大阪、心斎橋の春木レディースクリニックは、体外受精、顕微授精等の高度生殖医療を中心とした不妊治療専門のクリニックです。患者様とのしっかりとした対話をもとに治療方針を決めることを理念としております。安全性、確実性を配慮した治療を最優先に行います。
妊娠初期の胃痛、みぞおちが痛い…。その原因は?
まず初めに、妊娠初期の胃痛やみぞおちが痛む原因として考えられることを4つご紹介します。
・つわりの一種
妊娠初期の胃の痛みの原因としてまず初めに考えられるのはつわりです。
つわりは早ければ妊娠5週目ごろから始まり、8週ごろから10週ごろに最もひどくなり、12週ごろから落ち着いてきます。15週頃にはほぼ症状がなくなることが多いです。
つわりの代表的な症状として、吐き気、過食、偏食、匂いに敏感になる、眠気、イラつき、頭痛などが挙げられます。この中でも、嘔吐する、食べすぎる、偏った食事をとる等の行動が胃に大きな負担をかけます。特に嘔吐が繰り返し生じる場合は胃酸によって胃が荒れますので、胃痛が顕著に現れやすくなります。
そのため妊娠初期の胃の痛みはつわりが原因であることも多く、つわりの一種と考えることができます。
・プロエストロゲン(黄体ホルモン)の影響
妊娠するとホルモンバランスが大きく変化し、これが原因で胃痛が生じる場合があります。
女性ホルモンの一つであるプロゲステロン(黄体ホルモン)は、妊娠中に分泌され続けるホルモンで、妊娠前は子宮を妊娠しやすい状態にして、妊娠後は妊娠を維持する働きをする効果があります。
しかし、実はプロゲステロンには胃の運動を低下させる働きもあるのです。
そのため妊娠中は、妊娠前と同様の食事をとっていても胃もたれや胃痛が起きやすくなります。
・ストレス
胃痛は、妊娠中のストレスが原因で起きる可能性もあります。
妊娠中はつわりやホルモンバランスの変化が顕著に現れます。
これらの症状に合わせて、日常生活やライフスタイルの変化、妊娠に対する不安も重なり、妊婦の体には強いストレスがかかるのです。ストレスが続くと、胃酸が多く出たり反対に少なくなったり胃粘膜が傷ついたりして、胃痛が生じます。ストレスが原因で暴飲暴食をしてしまうと、さらに胃に負担がかかることもあります。
健常時でもストレスが原因で胃が痛くなることがありますが、妊娠中はより多くのストレスを抱えやすいので、胃痛も起きやすいと言えます。
・胃腸の病気の悪化
妊娠前に元々胃腸の病気を持っていた人は、妊娠により症状が悪化してしまうこともあります。
妊娠中はつわりやホルモンバランスの変化、ストレスなど胃腸にとって悪い影響を与える事がたくさん起きます。胃腸の病気について元々自覚がある方であれば判断がつきやすいのですが、妊娠前には気づかなかった病気が悪化して、胃の痛みとなって現れる場合もあります。
特に妊娠初期はつわりとの区別がつかずに放置してしまうかもしれません。
つわりが落ちついてくる15週以降になっても、胃痛だけが続く、または痛みが悪化していく場合は、産婦人科または消化器内科に相談してみましょう。
妊娠初期の胃の痛みは、流産につながる?
妊娠初期の胃の痛みで一番心配になるのが赤ちゃんへの影響ですよね。
胃痛がひどいと、流産につながるのではないかと不安になる気持ちもわかります。
しかし今まで述べたように、妊娠中の胃痛の原因はつわりやホルモンバランス、ストレスによるものがほとんどです。
気にしすぎると気持ちに負担がかかってしまいます。どうしても心配な場合は、産婦人科へ相談するのが良いでしょう。
胃が痛む時、薬を飲んでも大丈夫?
胃の痛みが強く、どうしても耐えられないという時に薬を飲んでも良いかどうか不安になりますよね。
ここでは妊娠初期の胃痛に対する薬の使用方法についてご紹介します。
・飲み慣れた市販薬でも自分で判断せず、医師・薬剤師に相談を。
普段飲んでいる胃薬や、市販の薬などを飲みたくなる気持ちはよくわかります。添付文書を読んで、妊娠初期でも飲めるのかどうかを確認した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実はほとんどの薬は、妊娠初期の場合は「飲まない方が良い・または連続で飲むのは避ける」とされています。少しぐらいなら大丈夫と自己判断で服用するのではなく、必ず服用前に産婦人科医や薬剤師に相談するようにしましょう。
胃痛がひどい場合や慢性的に続いている場合は、妊娠中でも飲める薬を処方してもらえることもあります。
一人で悩まずに、少しでも不安があればすぐに相談してくださいね。
・妊娠初期の胃痛 飲めない薬、飲める薬
ここでは妊娠中に飲める薬、飲めない薬をご紹介します。ただし、実際に飲んでいいかどうかは医師や薬剤師の判断を仰ぎましょう。あくまでも参考として捉えてください。
まず痛み止めとして有名なアセトアミノフェン系の鎮痛薬ですが、これは妊娠中でも服用することができます。しかし同じ痛み止めでもアスピリン系の鎮痛薬はお腹の中の赤ちゃんに影響を与える可能性があるので、服用は避けましょう。
妊娠中の胃痛に対しては漢方薬がおすすめです。
小半外科茯苓湯や半夏瀉心湯、人参湯は妊娠中でも使える胃に効く漢方であり、妊娠中に服用してはいけない生薬は含まれていません。即効性があるので、妊娠中の胃の痛みにもすぐに効き、つわりの症状を和らげる作用もあるため、安心して服用することができます。
妊娠初期に胃が痛む…。病院へ行く判断基準はどこ?
胃の痛みに耐えられない、病院に行きたい、と思ってもどの程度の痛みになれば病院に行けば良いのか判断基準に困りますよね。ここでは病院に行く判断基準について説明します。
・激痛、嘔吐・吐き気、下痢、出血などを伴う場合はすぐに病院へ!
横になっていても耐えられない・安静にしても胃が激しく痛む場合は、すぐに病院に行きましょう。
また、胃痛だけでなく嘔吐や強い吐き気、下痢、出血などを伴う場合も急いで病院にかかったほうが良いです。これらの症状は、深刻な病気やお腹の赤ちゃんの異常を表している可能性があります。最初は弱い痛みでも、徐々に強くなってきた場合も注意が必要です。
不安を感じたり少しでも違和感を感じたら、お腹の赤ちゃんのためにもかかりつけの病院や産婦人科へ連絡をするのが良いでしょう。
日常生活で胃の痛みを和らげる方法
胃痛が続くと生活にも影響が出ますよね。つらい胃痛を和らげるための方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
日常生活の中にすぐに取り入れることができる、胃の痛みを和らげる方法についてご紹介します。
①深呼吸や気分転換…。常に「リラックス」を心がけて
胃痛の原因はストレスであることが多いです。ストレスを和らげるために、深呼吸や気分転換を心がけましょう。
妊娠初期はお腹の赤ちゃんに影響が出ないように、生活や食事に過度に気を使う方が多いです。しかしそれがストレスの原因になってしまうと元も子もありません。たまには好きなことをしたり好きなものを食べたりして、気分転換をしましょう。
大切なのはリラックスをする心です。
忙しい時や余裕がない時は深呼吸をするだけでも十分に効果的です。自分にとって心地が良いこと、楽しいと思えることを積極的に行なって、ストレスを溜め込みすぎないようにしてください。
②締め付けの強い下着・衣服は避けましょう
締め付けの強い下着や衣服が原因で、物理的に胃痛が起きたり胃痛が悪化することがあります。妊娠中は、なるべくゆったりとした服を着るのが良いでしょう。
特に下着では、ワイヤー入りのブラジャーやお腹を補正するための下着が胃痛の原因になることがあります。あまりにも締め付けが強すぎるとお腹の赤ちゃんにも良くありません。
最近では、妊婦用のおしゃれで楽な下着も発売されていますので、自分の気に入った下着を探してみるのも良いのではないでしょうか。
③効果的なお腹マッサージ
お腹のマッサージをするのも、胃痛には効果的です。
マッサージのやり方は簡単。
優しく、強すぎない力でゆっくりと胃のあたりをさすってください。この時に八の字を描くようにしてさすると、妊娠中の便秘にも効果が期待できます。
また、入浴中や好きな音楽を聴きながら、お気に入りのアロマを嗅ぎながらマッサージを行うと、リラックスすることができてより一層効果的です。
マッサージをするときは呼吸法も重要で、ゆっくりと、鼻から息を吸って口から吐くということを心掛けてみてください。正しい呼吸をすることで筋肉も緩み、よりマッサージが届きやすくなります。
④ゆっくり湯船に浸かろう。シャワーだけはNG!
妊娠中の入浴は、シャワーだけで済まさずになるべく湯船に浸かるようにしましょう。
忙しい方はどうしてもシャワーだけの入浴をしてしまいがちですが、妊娠初期の胃痛やつわりを楽にするためにも湯船での入浴をおすすめします。
温かいお湯に浸かることで、リラックス効果も期待できますし、自律神経を整えたり体を芯から温めることもできます。また、湯船で落ち着いた時間を過ごすことで、妊娠生活について深く考えることができるというメリットもあります。
この時に注意していただきたいのは、食事後すぐの入浴は反対に胃の負担を強くしてしまうということ。
胃をいたわるために入浴する場合は、食事が済んでから最低でも1時間は時間を空けるようにしてください。
「食事療法」で妊娠初期の胃の痛みを和らげよう
胃痛を和らげるためには食事の内容もとても重要です。
胃のために食べた方が良いもの、避けた方が良いものについてご紹介します。
・胃痛を和らげる、おすすめの食べ物・飲み物
胃痛を和らげるためには、胃の負担が少ない食事を選ぶと良いでしょう。
胃の負担が少ない食事というのは、消化に優しいものや温かいものです。
消化に良いものはうどん、おかゆ、柔らかく煮込んだ野菜や魚があります。
これらを温かい状態で食べれば、胃の負担はかなり減るでしょう。また、消化を助けるために一口を小さくして食べる、よく噛んで食べることも意識してみましょう。
胃に優しい飲み物は、白湯や温かいお茶などがあります。また、体が冷えて困るときは生姜湯、リラックスしたいときは良い香りの紅茶など自分の気分に合わせて飲み物を選ぶのも良いのではないでしょうか。
・痛みが悪化することも。避けるべきNGな食べ物・飲み物
胃痛がひどい時には、消化に悪い食べ物や冷たいものは避けるようにしてください。余計に胃痛が悪化してしまう可能性があります。
油っぽいものや肉類などは、胃痛が治ってから食べた方が良いでしょう。
冷たい食べ物や飲み物も、食べすぎるとお腹を壊してしまうかもしれません。
しかしつわりで食欲がないときは、アイスやゼリーなど冷たい食べ物が食べやすいという方もいらっしゃいます。お腹を冷やさないように、少しずつゆっくり食べるように心がけましょう。
胃痛以外にも妊娠初期に起こりやすい症状
胃痛以外に妊娠初期に起こりやすい症状にはどんなものがあるのでしょうか。
妊娠初期に起こる体調の変化といえば、代表的なものにつわりがあります。胃痛以外に妊娠初期に起こる症状の多くがつわりの影響であることが多いです。
吐き気や嘔吐、匂いに敏感になる、倦怠感、眠気、便秘、発汗、精神的な不安などはつわりの代表的な症状です。
これらの症状は多くの妊婦さんが通る道ですので、不安になりすぎなくても大丈夫ですよ。
ただしあまりにも症状が重い、どうしても気になると言った場合には無理をせずにかかりつけ医や産婦人科医に相談するようにしてくださいね。
まとめ
ここまで、妊娠初期に起こる胃痛の原因や対処法について説明してきました。
妊娠中は体に普段感じないような変化が起きることが多く、どうしても不安になってしまいます。
しかしその変化は赤ちゃんが育っている証拠でもあり、すべてが悪いものというわけではありません。もちろん、無理をしてしまうのはよくありませんが、原因や対処法を知ることで胃痛や他の体調の変化とうまく付き合っていくのが重要です。
困ったときは医師など専門の方の力を借りつつ、ストレスのない妊娠期間を過ごしてくださいね。
この記事を読むことで、あなたが妊娠初期の体の変化に前向きに臨み、楽しく過ごせることを願っています。
※本記事は妊娠・健康・子育てに役立つ情報提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合には、ご自身の判断により適切な医療機関を受診し、医師にご相談ください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当サイトは責任を負いかねます。
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