小学校入学までに身につけておくべき、幼児期の数の指導方法
幼児教育は、大人顔負けの難しい問題を解かせるのが目的・・・ではありません。興味関心を持つ心から育てなければ、後々伸び悩んでしまいます。
灘中合格者数日本一の実績を持つ浜学園グループにて、年少下から小6までの子どもに15年以上算数を教えてきた筆者が、ご家庭での「後伸びする」数の学び方を伝授します!
皆さんは、数の「さん」と言われたら頭の中でどのようなイメージを思い浮かべますか?
もし、「3」をイメージされた方、それは数字です!!
あまりに当たり前のことで、日常生活において、数と数字の違いについて意識しないかと思いますが、幼児期の数の教育においては、とても重要なことです。
今回は、算数に強くなるために、小学校入学までに身につけておくべき、数の指導方法について年齢別にご紹介します。
【2歳~3歳】数を身近に感じる
【3歳~5歳】具体物を使って、10までの数の概念を身につける
【4歳~6歳】20までの数を使って、数量感と数論理の基礎を学ぶ
【2歳~3歳】まずは数字より数の認識から
この年齢になってくると、数に限らず子どもは身の回りのことに興味を持ち始めます。この時に、「おやつにクッキーを2枚食べよう」「(エレベーターに乗って)お家は6階だね」など日常生活に数が存在することを親も興味を持って一緒に探すと良いです。そうすることで、子どもから「あれはいくつ?」「お菓子を5つちょうだい」などと数に興味を持つようになるでしょう。
また数唱として、よくお風呂などで1~10まで数える(順唱)ことも多いでしょうが、合わせて反対の10~0の逆唱をすることで、「0」の存在も認識させることに繋がります。
子どもが数に興味が出てきたからと言って、数の問題集などをやるのはこの時期はまだ早いです。
なぜなら、冒頭の「さん」=「3」は間違いではないですが、「3」はあくまでも数字なので、ひらがなやカタカナと同じ文字です。
あり,いぬ,うまなどの言葉も知らない子どもにひらがなの「あ,い,う」から教える親はいないですよね。特に数に関しては、幼児期に数の概念や数論理をしっかりと理解することを強くおススメします。
【3歳~5歳】具体物を使って、10までの数の概念を身につける
では、具体的に子どもがどのように数を認識させていくかというと、基本的なステップとしては、次のような段階を踏まえると良いです。
➀具体物と具体物
準備物…ゾウやリンゴやミカンなどのイラスト,おはじき
・イラストの上に1つずつおはじきを置かせてみる(1対1の対応)
・すべて置けたら、2や3などとイラストやおはじきの数がいくつであることを子どもに伝える
ここで大切なことは、少し難しい言い方をすると「1対1の対応を通して、数は具体物を抽象化できることを知ること」です。
分かりにくい場合は、ゾウやリンゴなど物が変わっても「3(さん,みっつ)」であることを認識できれていればOKと考えてください。
②具体物と数
準備物…➀で使ったイラスト
・イラストを見せて「これはいくつ?」と聞いてみる
(パッと答えられないときは、焦らずに➀に戻りましょう)
また、同じイラストばかりだと絵の種類や位置で答えを覚えている可能性もあるので、形を変えて色々なバージョンを試すとよいです。
具体的には、外に出たときに「チューリップの花は何本ある?」や「電車は何両編成?」などと聞くとお勉強っぽくなくできます。
③数⇒数字,具体物⇒数字
この段階にきて、ようやく「1,2,3」などの数字に入ります。ここでの目標は、具体物⇔数⇔数字の3つが相互に関係してすべて一緒であることを認識することです。よって、数⇒数字と具体物⇒数字は、並行してやると良いです。
準備物…イラスト,おはじき,数字のカード(トランプなどでもよい)
≪数⇒数字の場合≫
・おはじきを5つ並べ、「いくつ?」と聞く
・次に同じ数字カードを選ばせる
≪具体物⇒数字の場合≫
・イラストを見せて、「いくつ?」と聞く
・次に同じ数字カードを選ばせる
数字カードは数枚並べておき、カルタのようにするとゲーム感覚で楽しくできます。
また②と③の方法は、数字カードを見せてイラストを取らせるなど反対の方法もやると効果絶大です!!
ここまで出来たら、小学校入学準備として数の問題集を併用していっても良いでしょう。
【4~6歳】20までの数を使って、数量感と数論理の基礎を学ぶ
上記の方法である程度のところまでの数は身につくと思いますが、数が増えるにつれて行き詰まる子どもも多いです。
これは、数をどのように捉えているかによって差が出てきます。次のポイントとしては、数を「数える」のでなく「まとまり」で考えるです。これの方法はたし算,ひき算の繰り上がり,繰り下がりが上手く理解できない子どもにも有効です。
この「数える」と「まとまり」の違いが理解できているか確認する方法として下記のような問題を子どもに聞いてみましょう。
・左から4つ目のおはじきに〇をしてみましょう(順序数)
・左から4つのおはじきに〇をしてみましょう(集合数)
大人であれば違いにすぐ気づくでしょうが、上の順序数が「数える」で下の集合数が「まとまり」の考え方になります。
幼児の間は数が少ないので「数える」方法で何とかなるため、5+2などのたし算も指を使って「6,7」といわゆる数えたしで考えられますが、これが59+23などになると「60,61,62,…」などと数えるのは難しくなるのは明白ですし、ミスも多くなります。
よって、次のような方法を使って数を「まとまり」で捉える練習を行うと良いです。
準備物…積み木
・積み木を3個、続けて5個出し、「合わせていくつ?」と聞く
・積み木を7個、続けて4個出し、「違いはいくつ?」と聞く
ここでのポイントは、数はバラバラに考える(数える)のでなく合成したり、分解したりする(まとまりで考える)ことができることを知ることで、たし算やひき算の考え方にスムーズにつなげることが可能です。
また20までの数であれば、数字の計算問題だけでなく、積み木の問題集などを併用するのも、子どもの気分転換になりおススメです。
その他に計算問題をするときに、「4+6=?」の問題だけでなく、「10=?+?」のような問題を考えることで数のセンスを磨くことができます。
前半の問題は、答えが1つになるクローズドクエスション、後半の問題は「1+9」「2+8」など、答えが複数あるオープンクエスションと呼ばれるものです。特に、幼児期に柔軟な思考力を育てるためには、このオープンクエスションは効果的なので、数以外の分野でも、ぜひ使ってみてください。
さいごに… 20までの数は奥深い!
近代教育の父と呼ばれるペスタロッチの
”20までの数には、数論理の90%以上が含まれている”
という言葉にある通り、20までの数は実に奥深いのです。
言い換えれば、ここをキチンと抑えることで、小学生になって100や1000などの大きな数が出てきても詰まることなく進んでいくことができます。ぜひ親子で一緒に楽しく数を学んでみましょう。
灘中合格者数日本一の実績と長年の歴史を持つ浜学園が、高い知性を育てる独自の幼児教育法を作り上げたピグマリオン教育研究所の全面協力でできた理想的な幼児教室