厚生労働省が公表した「保育所等関連状況取りまとめ」によると、日本全国の待機児童数は2万3500人余り、2年連続で増えたことがわかりました。
(グラフー2016年9月2日厚生労働省公表データより引用)
国が「待機児童ゼロ」を打ち出したのは実は今から15年も前の2001年のこと。当時から保育所は増えたものの、未だ解決の糸口が見つからない待機児童問題。私たちキッズラインは「待機児童ゼロ」を1日も早く実現するためにできることはないか、各種データを元に考えました。長文レポートですが、ぜひお読みください。
《目次》
1. なぜ待機児童はなくならない?
2. 保育園運営費用は、子供1人あたり月額40万円
3. 保育士としての就業を希望しない人は約半数
4. 疲弊する保育現場「ブラック保育園」
5. 入園後に残る悩み「お迎えコール」
6. 「保育園しかない」は本当か?
7. ベビーシッターで仕事復帰したい人は75%も
8. 保育士シッターで待機児童を解決する方法
9. 潜在保育士の最良の復帰方法は保育士シッター
10. 預ける以上のメリットがあるベビーシッターの魅力
11. 待機児童ゼロに向けて、新しい選択肢を
「保育園落ちた日本死ね!!」のブログ(2016年2月15日投稿)から半年以上経ち、国や自治体も待機児童対策に真剣に向き合わざるをえなくなり、保育園増設などの対策に追われています。たとえば、安倍首相は来年度までに保育の受け皿を50万人に増やす方針を示し、東京都の小池百合子知事は都知事選の公約で「待機児童ゼロ」を掲げ、保育園の規制緩和などを打ち出しています。
しかし、待機児童対策は「保育園しかない」のでしょうか?
アメリカやフランスなど欧米諸国では、保育ママやシッター制度など、保育園に限らない育児支援の選択肢が多く存在します。日本の育児支援の「保育園しかない」という限定的な選択肢には、限界があるのではないでしょうか?
私たちキッズラインは、この待ったなしの待機児童問題を保育園を増やすより早く、むしろ即解決できる選択肢として、ベビーシッターに大きな可能性があると考えています。
日本の待機児童はここ8年連続で2万人を超えています。さらにその数はこの2年増え続けています。国が「待機児童ゼロ」を打ち出したのは今から15年も前の2001年。それから保育所の定員は約50万人分増えました。
それなのに、なぜ待機児童はなくならないのでしょうか?
それは保育所の定員を増やしても増やしても、それ以上に、女性の社会進出が進み、共働き夫婦やひとり親など、保育園を必要としている人が増えているからです。
待機児童をなくすためには、これから先も保育園を増やし続けるしかないのでしょうか?保育園建設には時間もかかる上、保育士も確保しなければなりません。最近では近隣住民から苦情が寄せられるなど、解決すべき問題がたくさんあります。さらに運営費は、子供1人あたり月額最大40万円かかります。東京都板橋区が公表している資料によると、認可保育園で園児1人にかかる保育園の運営費は、保護者の負担分を差し引いても、月額で0歳児が約39万円、1歳児が約19万円、2歳児が約16万円。これだけの金額を毎月、区が負担しています。
全国に保育士は約119万人いますが、保育士として働いている人はわずか43万人。資格があっても実際に働いていない「潜在保育士」は約76万人もいます。こうした「潜在保育士」を保育園に活用しようという指摘もありますが、保育園の労働環境を改善しない限り、多くの復帰は見込めません。
厚生労働省が2014年8月に公表しているデータでは、保育士資格を有するハローワーク求職者のうち約半数は保育士としての就業を希望せず、働く職場の環境改善に関する項目としては、「賃金が希望と合わない」が最も多く、「休暇が少ない・休暇がとりにくい」ことが挙げられるとのことでした。また出産後、保育士として復帰するのが難しいという話もよく聞きます。
(グラフー厚生労働省2014年8月公表「保育人材確保のための『魅力ある職場づくり』に向けて」より引用)
保育園の人材不足が続くと、現場で働く保育士に大きな負担がのしかかります。保育士の低い賃金ばかりがしばしばクローズアップされますが、それだけではありません。認可保育園では、一度に多くの子供を責任を持って相手する仕事の大変さ、そして時間外の資料作成や、行事の準備などの仕事量の多さに退職する人が後を絶ちません。
たとえ子供が大好きで優秀な保育士でも、サービス残業が続き、過酷な労働環境では体力的にも精神的にも疲弊します。最近では労働環境が過酷で保育の安全性が懸念される「ブラック保育園」の存在が問題となりはじめています。
保育園を増やしても、働く人材の数と質を担保できなければ、親御さんは安心して子供を預けることができません。保育園に入れたら安心というわけではありません。
待機児童の85%は0歳〜2歳。病気になりやすく、親が最も保育園から呼び出されやすい時期です。
保活を終え、やっと保育園に入れたと思っても、ワーキングマザーの悩みは終わりません。今度は、子供が病気になるたびに会社を早退したり、休まなければならないことがワーキングマザーの一番の悩みになります。子供の体調が1日で回復すればまだいいですが、感染症にかかって1週間も保育園に行けない、なんてこともあります。会社から冷たい目で見られて肩身の狭い思いをしているママは少なくありません。
日本育児保育協会が行ったアンケートでは、子供が病気にかかった時、家庭内での対応として最も多いのは「母親が仕事を休む」が63%、「祖父母に預ける」が25%、「父親が仕事を休む」はわずか8%でした。父親に比べて圧倒的に母親の負担が大きいことがわかります。祖父母が遠方の場合、より母親の負担が大きくなります。また、子供が病気になった時の母親の気持ちとして、「仕事を休むと職場に迷惑をかける」と感じる人は約7割でした。病気になった子供を預かってくれる病児保育施設もありますが、感染症などの流行期には空きがあなく、預けれらない場合もあるかもしれません。
保育園建設には時間もお金もかかり、保育園は過酷な労働環境となりつつあり、潜在保育士が復帰しないばかりか、保育士流出に拍車がかかっています。さらには保育園で解決できない病児の際の問題も残っています。
もう保育園頼みの待機児童対策は限界ではないでしょうか?
私たちキッズラインでは、この待ったなしの待機児童問題をより早く解決出来る選択肢として、ベビーシッターに大きな可能性があると考えています。
前述の通り保育園建設には用地確保など解決すべき問題が多く、時間がかかります。そうしている間にもできる待機児童対策が、まさにベビーシッターの活用です。シッターさんはすでにいますし、弊社でも新たにシッターに登録する人は増え続けています。保育する施設は親御さんの自宅なので新たに用意する必要がありません。
また待機児童解消の主な目的は「女性が輝く社会」の実現です。やっとのことで子供を保育園に入れても「お迎えコール」で精神的にも仕事との両立が難しくなり、女性が安定して働き続けることはできません。ベビーシッターならば、病児保育に対応できるシッターさんがいるので、安心して仕事に行くことができます。
キッズラインが実施したアンケート調査では「ベビーシッターで職場復帰したい」と回答した人は全体の75%でした。また、半数以上の人が、ベビーシッター料金の補助という方法でも、早急に待機児童問題を解決してほしいと回答しました。さらに3人に1人が待機児童の関係でキャリアにマイナスになったと感じたことがあると回答しました。
キッズラインで待機児童問題についてのアンケートを実施したところ、開始数日で250件もの回答が集まりました。中でも「小池都知事に待機児童や保育について伝えたいこと(自由記入)」では、親御さんの悲痛の声が170件以上集まりました。原文のままいくつかご紹介します。
「復職のタイミングを職場に約束できることが重要です。そのためには、0歳児〜1歳児が保育園に入れなかった時に、誰かに見てもらえる受け皿が必要です。もし、待機期間中、ベビーシッターを安価に利用できれば、その受け皿の一つとなります。さらには、ベビーシッターを利用していたということが、点数加算される仕組みがあると、制度がより盤石になると思います。」
「どこに住むかで保育園の状況が違いすぎるので、なんとかしてほしい。」
「保育園をたくさん作ってしまっても将来ますます子供が減り保育施設が邪魔になるときが来るかもしれません。だからシッターさんの充実と補助金は大変有効だと考えています。」
「ベビーシッターは施設の投資も不要で、シッターさんの負荷もマンツーマンなので少なく、親も自宅で安心して預けられるサービスです。是非待機児童解消の政策としてご検討いただきたいです。」
「保育園に入れたから問題解決ということではなく、その後も母親・社会人としての葛藤は続きます。本来、家庭と仕事の両立は女性だけの問題ではないと思います。それが女性だけに焦点が当てられることに少し違和感を感じています。核家族と共働きの家庭が増えている昨今、それぞれの家庭や状況に合わせて、保育園利用やシッターさんの利用など、柔軟にサポートが受けられれば良いのではないかと個人的には思います。」
「保育園不足については対応が遅く不満しかありません。保育園設立だけにこだわらず、シッター補助や、いろんな道で補助を行ってほしい。」
出典:
「保育園より費用が大幅に高いし絶対無理」「海外ならともかく日本では現実的じゃない」と考える方が多いと思います。そこで、待機児童対策の最前線、ベビーシッターを選んで職場復帰されている方をご紹介します。しかも会社から費用を半額補助してもらっていて、費用面も工夫されています。
保育士シッターで職場復帰した場合の費用の問題
この長友さんのケースでは、0歳のお子さんのベビーシッターを午前9時から午後5時まで、1日8時間、週5回で利用していました。ベビーシッターの時給は1,700円、月額約27万円、家事代行のオプション代や交通費を入れると月額約30万円前後になります。例え共働きだとしても、会社からの補助がなければ個人が負担できる金額とは言えないでしょう。
そこで、個人負担を軽減するために次の3つの解決策を考えました。
解決策①:ベビーシッター費用を公費助成して、待機児童を解決する
解決策②:公費に加え、企業からの補助を充実させる
解決策③:近所の待機児童と一緒にベビーシッターに預けて費用節約
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解決策①:ベビーシッター費用を公費助成して、待機児童を解決する
前述の板橋区の公表データによると、認可保育園で1人の園児にかかる公費は約20〜40万円です。その公費の一部だけでも待機児童となった家庭に、ベビーシッター助成を割り当てれば、即効性の高い待機児童対策が実現できます。
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解決策②:公費に加え、企業からの補助も充実させる
日本の企業は様々な手当てが充実しています。例えば単身赴任手当て、住宅手当て、家族の手当てなど。これらの手当てと同じような感覚でベビーシッター費用を手当てとして補助するのは難しくないと思います。保育園に落ちてしまった社員に対して一定金額を企業側が負担し、社員の職場復帰が可能となれば、社員1人のパフォーマンスによって企業側が得る対価は大きなものになるはずです。長友さんのケースでも、コンカー社は優秀な人材の流出を防ぐ仕組み作りに注力しています。
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解決策③:近所の待機児童と一緒にベビーシッターに預けて費用節約
ベビーシッターは1対1で保育するイメージが強いと思いますが、ベビーシッターの中には元保育士さんも多く、複数のお子さんを見てきた経験のあるシッターが数多くいます。実際キッズラインでは、ご友人同士で2~3人お子さんを預けている利用者がいます。ならば近所の待機児童をまとめてベビーシッターに預けたら費用も節約できるのではないでしょうか。
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解決策①②を組み合わせる
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解決策①②③すべて組み合わせる
ベビーシッターも保育園同様、待機児童となった家庭をくまなく対応するには、人材確保が非常に重要です。保育園から保育士流出が進む中、キッズラインでは保育士の資格を生かしたベビーシッターが増えています。
その理由は、給与アップばかりではなく、「働く時間を自分で決められ、仕事とプライベートのバランスがとれる」「保育士として理想の育児を追求できる」ことが挙げられます。
キッズラインでは、ベビーシッターが自分で時給を設定します。また、空いている時間をスケジュールに自分で登録し、そのスケジュールを見て親御さんがシッティングの依頼をしてくるので自由な働き方が可能です。親御さんからも保育のプロである保育士のベビーシッターはとても人気です。キッズラインの保育士シッターさんは、保育園勤務のときと比べて給与が1.5倍に増えたことや、拘束時間が減り自分のペースで働けると話しています。
ベビーシッターは「預ける人がいない時に預ける最終手段」と思っていませんか?ベビーシッターは全く後ろ向きな手段ではありません。
●プロの保育を独占。心強い育児パートナー
保育士経験のあるベビーシッターなら、保育園で何十人もの子供を同時に見てきたプロの保育士さんを常に独占できます。保育園の代わりにベビーシッターで早期復帰をされた長友さんも「仕事に復帰するために依頼したベビーシッターだったが、自分の育児の幅が広がり、予想以上のメリットを感じている」と話していました。1人目の子供だと、お母さんも育児は初心者、どうしたらいいかわからない時はネット検索したり、友達に聞いたり、手探りですよね。子供を保育している様子を見ることができたり、育児の相談もできたりと、プロが長友家の専属となっている状態です。特にご両親が遠方であったり、育児の相談ができる人が近くにいない方におすすめです。
●仕事に集中できる環境が整いストレスが減る
保育園を選ぶ際、大半の方が「自宅からの近さ」を最優先に考えていると思います。シッターの場合は「距離ゼロ」です。在宅勤務が可能な企業であれば、シッターに見てもらいながら在宅で仕事をするという選択も可能です。こうした仕事の仕方が可能になれば、都心の通勤ラッシュも減るかもしれません。そして、ベビーシッターによっては子供の保育だけでなく、家事代行もお願いできます。1日みっちり仕事をして帰宅後「これからご飯食べさせてお風呂いれたら、洗濯物もたたまなきゃ、掃除もしないと…」お母さんはへとへとで、翌日の仕事の準備はおろか、読書したり、リラックスしたり、自分の時間どころではありません。仕事をしている間にご飯を作ってもらったり、掃除をしてもらえれば、自分の時間が確保でき、翌日の仕事へ向けて体を休めたり、キャリアアップのための勉強などにもっと時間を使うことができるでしょう。何よりストレスが減って、子供と笑顔で向き合える時間が増えることが魅力だと思います。
待機児童問題の解決には本当に「保育園しかない」のでしょうか?保育園の増設も、ベビーシッターの活用も両方取り組んでいけることが理想です。保育園に預けたい人もいる、ベビーシッターに預けたい人もいる、色々な選択肢があって、様々な選択をした上で再び働ける、そんな社会になっていくことを望んでいます。
私たちキッズラインは、女性が輝く社会を目指し、子供を産み育てやすい社会に向けて活動を続けます。同時に、早急に解決しなくてはいけない待機児童問題について、私たちも、あらゆる方法を模索し、自治体や政府へ実際に足を運び、現状を訴え改革を提案するなど発信をして参ります。
今回、このように記事にまとめさせていただいたのは、私たちのこの提案、お困りの親御さんのこの声が、一人でも多くの方や、政府や自治体に届くことを願って書きました。ぜひ、共感してくださる皆様は、シェアや拡散でご協力頂けるとありがたいです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。