絵本『こうさぎましろのお話』から学ぶ『嘘』と『罪悪感』と『許されることの喜び』
『こうさぎましろのお話し』という絵本を知っていますか?サンタさんにクリスマスプレゼントをもらった子ウサギのましろ。でももっとプレゼントが欲しくなってしまい・・・。子供らしい嘘と罪悪感。クリスマスの季節に子供とぜひ読みたい一冊です。
『こうさぎましろのお話』
絵本の主人公はこうさぎの”ましろ”。サンタさんのすぐ近く北の国に住んでいるため、毎年クリスマスには一番最初にプレゼントをもらいます。さっそくプレゼントにもらったお菓子をすぐさま食べ終わってしまった”ましろ”は、もう一つプレゼントが欲しくなります。
さて、”ましろ”はどうしたと思いますか?サンタさんをだましてもう一度プレゼントをもらうために、ある”嘘”をつくのです。
もっと他のものがほしくなった“ましろ”は、しろい体に炭をぬりつけてべつのうさぎの子のふりをすることにします。
出典:www.ehonnavi.net
そう。他のウサギになりすまして、サンタさんからプレゼントをもらおうとします。もちろんサンタさんはそんな”ましろ”の嘘はすぐ見抜いてしまいます。
実生活でも子供たちって、すぐにバレるような”嘘”を真剣につきますよね!大人からしたらバレバレなのに、子供たちは真剣そのもの。
そしてサンタさんは、”ましろ”の嘘に気づきながらも、袋の中に残っていた種をひとつ、”ましろ”にあげました。”ましろ”は大喜びでサンタさんのもとを去り家に帰ろうとします。ですが、そこで恐ろしいことに気づいてしまうのです。
おくりものを手にいれたあと、ましろは炭をおとそうとして、払ってもこすっても黒色がとれないことに、急にこわくなります。「どうしよう。ぼく、ほんとに“ましろ”じゃなくて、べつのうさぎになっちゃったのかしら。」
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自分が自分でなくなってしまったことへの恐怖と、”嘘”をついたことに対する罪悪感に目覚め始めるのです。真剣にウソをついて、欲しいものを手に入れた子供たちも、成長するにつれて、実は心の奥底では”ましろ”のような罪悪感を感じているものなのです。さて、罪悪感に目覚めた”ましろ”はそのあとどうするのでしょうか?どうすれば、本来の自分を取り戻すことができるのでしょう?
ましろは泣きながら「(このおくりものを)かみさまにおかえししておこう。土のなかへうずめて。」と思いつきます。
出典:www.ehonnavi.net
“ましろ”はその種が、神様からの贈り物であったことに気づいていました。だから、神様から頂いたものを、嘘をついてまでもらってしまったものを、神様にお返しするという方法=種を土に埋めるということを思いつくのです。それで許されるかどうかは分からない。でも、”ましろ”なりの方法で、その罪を償おうと考えたのでしょう。事実、種を土に埋めている間に雪で、”ましろ”の体についた『炭』(”嘘”や”罪悪感”のメタファー)は落ち、元の”ましろ”に戻って家に帰ることができました。
また、この物語が美しいのはこれから。”ましろ”が神様に返すために土に埋めたその種は、グングングングンのびて、立派なもみの木となるのです。しかも、その木には世界中の子供たちにプレゼントできるほどたくさんのおもちゃやお菓子が、豊かに実をつけたのでした。
最後のシーンでは、”ましろ”は仲間たちを集めて、この木になったプレゼントを配るためにサンタさんのお手伝いをします。自分のついた”嘘”を発端に生まれたその木とプレゼントを、”ましろ”は他の人々のために与え始めるのです。
”ましろ”に学ぶ子供たちのウソとの付き合い方
”ましろ”のように、子供たちは大人には見え見えの嘘を真剣につくときがあります。私たちはついつい「そんなウソついて!」と怒ってしまいがちですが、サンタさんはなぜ”ましろ”の嘘を受け入れたのでしょう?
もしかしたら、サンタさんは”ましろ”を心の底から信じていたのかもしれません。今は嘘をついて、ちょっと体に炭をぬっている”ましろ”も、嘘をつくことによって自分ではなくなっているということに自ら気づき、きちんと悩んで反省するであろう、ということを。
そして、自ら考えて行動した結果が、やがてもみの木のプレゼントのようにきちんと実り、”ましろ”自身も一緒に成長するのだ、ということを、本気で信じていたのかもしれません。
子供たちのちょっとした嘘に直面したとき、この”ましろ”の物語を少し思い出して、サンタさんのように子供たち自身の誠実であろうとする力を信じてみませんか?責めたり正したりするのを少し待って、どんなもみの木に育つのか、見守ってみましょう。もしかしたら、思いもよらないプレゼントがなるかもしれませんよ!