マジか…!! 幼稚園もストでお休みに!?イタリアのストライキ事情
明日、幼稚園が先生たちのストライキで休みかも!? ママグループのLINEにこんな情報が駆け巡ったらさあ大変!翌日の子どもたちの処遇を考えなければなりません。これ、イタリアでは日常茶飯事。親たちはとっても困るけどストライキは労働者の権利だからです。頻発するイタリアのスト事情をルポします!
ストライキ王国、イタリア!
イタリアでは、本当にびっくりするくらいストライキが多発します。一番回数が多く、一般市民が迷惑をこうむるのが公共交通機関のストライキ。バカンス明けの9月などピーク時には、毎週といって良いほどストライキが行われ、国鉄や市バスや路面電車、地下鉄などが運行停止または間引き運転になったりします。一般市民はその度に、交通手段を奪われ大迷惑!!! このほか、航空会社やジャーナリストのストライキ、博物館や美術館の職員のストライキ、タクシーのストライキ、などなどあらゆる職種で行われます。
そもそもストライキって何?
日本では、ほぼなじみのないストライキ。意味はなんとなく分かっても、実際に体験したことがある方は少ないのではないでしょうか。
ストライキとは
労働者が労働条件の改善・維持などの要求を貫徹するため、集団的に労務の提供を拒否すること。ストライキ権は団結権・団体交渉権とともに労働者の有する基本的権利
出典:kotobank.jp
つまり、労働者の権利として法律でも認められている行為なんですね。迷惑をこうむる方は大変ですが、迷惑を引き起こして主張を通すのが目的ですから、仕方ない・・・。
1ヶ月に多いときは2回、ストによる休校!
しかーし!いくら権利とはいえ、就学児を抱えるワーキング パパママが最も困るストライキがこちら。
公立学校の教職員のストライキ!!!
これは、教師はもちろん事務員や清掃員のストライキです。職種ごと、労働組合ごとに行われるので、回数も倍増します。
イタリアでは現在、140を超える学校機関の教職員の労働組合があり、2014年から2016年の3年間では40回の公立学校のストライキが行われたんだそうです。これつまり、1年で13.3回。6月~9月は夏休み、冬休みやイースター休みなど休校の日を除くと、約7ヶ月で13.3回・・・。驚く事なかれ、本当に1ヶ月に2回近くのペースです!(データ元 : 2016年11月7日 全国紙コッリエレ・デッラ・セーラ)
日本では、学校の先生はストライキを起こせない!
実は日本の公務員は、国家公務員法第98条、地方公務員法第37条によってストライキを禁止されています。でも多くの先進国では公務員のストライキもOK。フランスやイタリアでは公務員や公立学校の教師および職員のストライキも認められています!!!公立なのに!義務教育なのに!と私は最初びっくりでした。
意外とイタリア人の多くは、ショーペロに寛容らしい。基本的に悪いとされるのは、経営者だったり、いつまで経っても年金問題を解決しようとする姿勢を見せない国家だったりで、それらの悪に対抗する労働者の手段として、ショーペロは至って重要かつ当然の権利として認知されている。
出典:tacasi.com
(ショーペロとはイタリア語でストライキのことです)
親はたいへん!
学校が(しかも急に)お休みになってしまったら、その日の子どもの面倒を誰かが見なければなりません。会社勤めでそうそう休みが取れないパパママはたいへん!
職員のストライキで急に休校になったりも。頼める親戚やベビーシッターも見つからない!急すぎて仕事も休めない!そんな時、最終手段として、職場に子どもを連れていく人も少なくありません。
出典:up-to-you.me
ストの告知は学校の掲示板でチェック
ストライキは、増給や労働環境の改善などの主張を国や雇用者に訴えて、改善を勝ち取るのが目的です。ですから、いついつがストですよーという告知は一応学校の掲示板に張り出されるものの、当日まで実際に行われるかどうか分からないのが常です。また前日になって突然告知が張り出されることもあります。
ストライキのチェックリスト活用!
教育機関を含めて、イタリア全土のストライキ情報を検索できるサイトまであります。
当日朝まで登校できるかどうか分からない!
しかも困るのは、ストが決行になっても「ストライキに参加しない教職員もいる」ということです。ストに参加すると、その分お給料が天引きになるわけなので、参加しない先生方、職員の方々もいるんです。そういう場合、実は登校できちゃったりするので、お休みさせる必要もなくなります。しかし!繰り返しますが、業務を休むことによって迷惑を引き起こし主張を通すのがストですから、基本的に当日の朝になるまでどの先生がストに参加して、誰が参加しないのか教えてくれないのです!!
我が家の息子の幼稚園では、当日に登校した職員で分担し、他のクラスの子どもたちもまとめて ”先着順” で引き受ける、という対応をします。教員1人に対する最大生徒数が決まっているので、当日いる先生の数で、登校できる生徒数も決まってきます。そのため、開園前の7時50分などに送りに行って駆け込み一番で入れば、ストライキの日も1日学校で面倒を見てくれる可能性もあります。
また、給食員や清掃員のストの場合は、「先生はいるので登校できるけどお昼の給食が出ない」とか、「使えるトイレが限られてくる」とか、色々噂が出回り、結局やっぱり職員がいないと登校できない、ということが前日の夜に判明する・・・など、情報に翻弄されっぱなしです。最近はスマホのメッセンジャーアプリを駆使してママ同士、情報を交換し合っていますが、これはこれで誤報が飛び交ったりして、何十件ものメッセージを読むのも一苦労です。
授業出来なかった分は・・・
うちの子はまだ幼稚園児ですが、小学生ともなると、ストで休みになった学習内容はどっさり宿題として出されます。何しろ年間13日分もの授業がストで潰れるのですから、そりゃあ学業に遅れも出るでしょう。ただでさえ毎日新聞膨大な量の宿題が出るというイタリア。休校だからと言って子どもたちは遊び回れる訳でもないのです!
ストライキの成果は果たして・・・??
いくらストライキが労働者の権利と言っても、イタリア人がストライキに寛容だとしても、ひとつ物申したい点があります!!それは、イタリアのストライキは成果をあげられていないんじゃないか、ということ!
隣国フランスなどでは、航空会社など大規模な場合は特に、望む改善策を得られるまで無期限でストライキを行ったりします。けれどイタリアは、突如1日だけ、それも参加したい人だけがストライキ・・・。そしてまた1~2週間後にぽっかりストライキを繰り返す。これでは、成果が得られなくても主張が通らなくてもお構いなしでその日1日の業務を休んでいるようにしか見えません!ストライキという名のサボりじゃないか??
ローマなどでは、ダービー(サッカーのラツィオVSローマ戦)など、みんなが観戦のため仕事を休みたい日に公共交通機関のストライキが良く起きる、なんて皮肉めいた冗談もささやかれます。もちろん長くストライキが続くと困るのですが、どうせやるならちゃんと成果を出してもらい、回数を減らして欲しい・・・と思うのは私だけじゃないはずです!
なんと、生徒たちもストを起こしてた!
そしてびっくり、何と生徒側もストライキを決行していました。これは、ローマ市の予算不足で真冬に学校の暖房が作動せず、コートどころか毛布持参で登校しなくてはならない日が続いた2017年1月のこと。市内の幼稚園、小学校、中学校、高校など多数の公立教育機関に影響が出ており、度々ニュースになっていました。法律では、校内の気温は18~22℃であるべきとなっているのにも関わらず、暖房設備が古くて壊れており修理もされずに放置されていたため、教室の気温は5℃まで下がったとか!そこでいくつかの高校の生徒たちが、市庁舎に続く公道を占領して練り歩く3時間に及ぶ抗議デモを決行。終業時間前の正午に下校したのです。彼らのストは成果を上げられたようです(そもそも公立教育機関で暖房すら効かないなんて、これまた国として由々しき問題ですが)。
この話を聞いて、ストライキという形で行動する権利を持っていて、それを行使し主張を上げることが大切という意識が子どもたちにも根付いているんだなぁと思いました。・・・と、感心している場合ではありません。学年末まであと2ヶ月半。突然のストライキ休校が無いよう祈っています。